第八章 望郷の小夜曲
第二話 友達
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「……っぁ」
ルイズの指先が、未だ固く屹立し、敏感になったままの先端に触れた瞬間、
「――――――っ」
涼やかな風が、闇と淫蕩に沈む部屋の中に吹き込まれた。
「―――随分とまあ……」
ねっとりとした空気が満ちる部屋に風穴を空け。涼やかな風と共に人工的な明かりと共に、人影が入り込む。
ドアを開け放ち、廊下から差し込む魔法の明かりを遮り立つのは、
「ふんっ……どうやら……お楽しみのところを邪魔してしまったみたいですね」
桶を脇に抱えたシエスタであった。
部屋の中に漂う粘ついた女の匂いに顔を顰めてみせると、シエスタは部屋の主であるルイズに挨拶するでもなく、ずかずかと上がり込む。ベッドの上にいるルイズに顔を向けることなく部屋を横切り、締め切られたままの窓を開け放った。窓が開けられた瞬間、風の通り道が生まれ、冷え込んだ夜風が音を立てて吹き込んでくる。涼やかな風は、部屋の中に澱む空気を吹き散らし、霧散させる。勢い良く吹き込んでくる風を目を閉じ受け止めていたシエスタは、吹き込む風が弱まると、くるりとベッドの上からぼんやりとした視線を向けてくるルイズに向き直った。
「……窓ぐらい開けたらどうなんですか?」
シエスタの呆れたような声に、ルイズは何の反応も返さない。ただ、意志が感じられない、焦点が合わない視線を向けてくるだけ。そんなルイズの様子に、シエスタは小さく溜め息を吐くと、ゆっくりとベッドに近付いていく。近づいてくるシエスタに対し、ルイズは何も言わずただ視線を向けるだけ。
ベッドの脇で立ち止まったシエスタは、暗く澱んだ瞳で見上げてくるルイズを見下ろす。
互いに何も口にしない。
部屋の中に、窓から吹き込む風の音だけが響く。
そんな中、突然、
「ッ!」
激しい水音が響き渡った。
発生源は、ベッドの上。
ベッドの上には、まるで服を着て風呂に入ったかのようなルイズの姿があった。
突然水を掛けられたルイズは、しかし何の反応を見せることなく、視線は変わらずベッド脇に立つシエスタに向けられたままであった。
そんなルイズの何の感情も感じられない視線を向けられるシエスタは、脇に抱えていた桶をルイズに向けた姿で立っていた。桶の端から、水滴がポタポタと落ちて床を濡らしている。
ルイズを見下ろすシエスタの目は、ルイズと違い、燃え上がるような怒りに染まっていた。それは鍛えられた戦士でさえ震え上がらせるほどの怒りに染まっていた。しかし、そんな視線を向けられながらも、ルイズの瞳には、何の感情も浮かぶことはなかった。凪いだ夜の海のように、暗く静かなままである。そんなピクリとも身じろぎしないルイズ髪の先から水滴が落ち、ベッド
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