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剣の丘に花は咲く 
第八章 望郷の小夜曲
第二話 友達
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を呼ぶ。

「それに、良くそんなに浮かれていられるわよね」
「え?」
「あなたも随分親しかった筈でしょ……ルイズの使い魔と」
「あっ」

 悲しげに目を伏せて呟くモンモランシーに、ギーシュはハッ、と目を見開くとがくりと肩を落とした。

「ルイズ……戻ってきてからずっと部屋に閉じ篭っているのよ。食事もちゃんと取っているようには見えないし……このままじゃ」
「……シロウ……か……」

 二人の視線が、示し合わせたように同じ方向に向く。
 視線の先には、女子寮である火の塔の一室。
 この戦争で、大切な人を亡くした少女が閉じこもる部屋。






 
 ……ぁ…………ぅ………………はぁ……ぁ…………

 日が沈み。月と星が空を彩り始める頃、魔法学院にある五つの塔のうち、学生が住む寮塔に見える窓に明かりが灯り始める。そんな中、一つだけ明かりが灯らない部屋があった。
 明かりがなく、闇に沈む部屋を浮かび上がらせるのは、空に浮かぶ二つ月。雲一つなく広がる空から降り注ぐ月光が、窓から差し込み部屋の中にある天蓋付きのベッドの上にいる人物を照らし出す。そんな青白い月光に照らされる部屋では、くぐもった声が響いていた。

 ……ぁ……ぃ…………ぁ…………っ……

 か細い明かりに照らし出される部屋に響く、同じくか細い声を持ち主は……この部屋の主であるルイズであった。
 大きなベッドの上にいるルイズは、すっぽりと身体全体を覆う大きな服を着て仰向けに寝ころがっている。窓から覗く双月が、ブカブカの服から微かに覗く白い手足を青白く浮かび上がらせている。時折身動ぎする度に、服の裾から覗くルイズの身体は、ぬらりとした何かで濡れていた。

 …………っっ……んっ………………

 ルイズが身に付けている服は、か細い月明かりでもハッキリと分かるほど古びた大きな男物の服であった。
 それは以前、士郎が王都で購入した粗末で地味な服。士郎がそれに袖を通したのは、数える程度でしかなかった。元々情報収集のため購入した服であり、任務が終われば捨てても構わないものであったが、貧乏性と言うか何と言うか、士郎はそれを捨てることはなかった。そんな士郎に対し、ルイズは苦い顔で何度も捨てなさいと文句を言っていた。しかし今、そんなみすぼらしいものは捨てなさいと散々文句を言っていた当のルイズが、士郎用に購入したタンスの中からそのみずぼらしい服を引っ張り出しただけでなく、それを着込みベッドの上に寝ていた。

 ……ぁ……ぁ……ぁ…………ん…………ぃ…………

 ベッドの上にいるルイズは、時折痙攣するように身体を震わせている。
 口から漏れる吐息は、荒々しく乱れ。痛みを堪えるように悶える身体から覗く身体は、青白い月光に照らされながらも、その赤みをハッ
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