第八章 望郷の小夜曲
第二話 友達
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「―――そしてぼくが突撃と高らかに指示を下すと、勇猛果敢な我が部隊は次々に襲いかかるオーク鬼どもに銃弾を叩き込んだ! だがしかし、敵は怯むことなく襲い掛かる、このままでは押し切られてしまう。そんな時、ぼくの魔法が炸裂したっ!!」
魔法学院のとある教室の中に、ギーシュの声が響く。
ギーシュが高らかに杖を掲げると、息を飲んで真剣な顔をしてギーシュの話を聞いていたギャラリーからおー、と言う感嘆の声が上がる。ギーシュはギャラリーの反応に調子を良くすると、更に声を大きくする。
「ふっふっふ。ぼくが杖をひとふりする事に、ゴーレムがオーク鬼を打ち倒すっ!! 歴戦の戦士が集ったぼくの部隊とゴーレムを止められる者などいなかったっ! そしてつい―――あれ?」
鼻を膨らませ、自慢気に話をしていたギーシュだったが、常に視界に入れていた女性が席を立つのに気付くと、滑らかに動いていた口がピタリと止まる。席を立った少女は、ギーシュに声を掛けるどころか顔を向けることなく教室を出て行く。その様子にギーシュは慌てて席を立つと、急いでその女性の後を追いかけ始めた。
「も、モンモランシーっ!」
「何よ」
教室から出たギーシュは、石畳の廊下を歩く少女。モンモランシーの背中に向けて声を上げる。しかし、モンモランシーは振り返ることなく歩き続ける。モンモランシーの背に、拒絶の意思を感じたギーシュは、足に更に力を込め、走る速度を上げた。
「何で逃げるんだよモンモランシーっ!? 君に聞いてもらうために話しをしていたのにっ!」
モンモランシーに追いついたギーシュは、モンモランシーの肩に手を置いて引き止める。
「そうだ、これを、これを見てくれ。勲章だ。しかも杖付剛毛精霊勲章だぞ!」
「それがどうしたっていうのよ」
「ど、どうしたって……く、勲章だよ。君のためにぼくは手柄をたてて」
モンモランシーの予想外の態度に、戸惑うギーシュ。モンモランシーは勢いよく振り返ると、声を荒げてギーシュを責め始める。
「勲章? 手柄? わたしのため? はっ! 何を言っているのよあなたは、聞いている筈よね。あなたたちが戦争に行っている間に、この学園に敵が攻めてきたって」
「そ、それは……」
もちろん知っていた。
魔法学院に帰ってきて直ぐにその話は耳にした。幸い学園の生徒に死者は出なかったが、銃士隊の中には戦死者が出たそうだ。
「わたしのためって言うなら、戦争が始まったら、常にわたしの傍にいて、わたしを守るべきでしょうっ!! あなたがいくら手柄や勲章を立てても……わたしが死んでたら、意味がないでしょ」
「モンモランシー……」
涙に瞳を潤ませながら声を荒げるモンモランシーに、気落ちした様子でギーシュが小さく名前
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