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王道を走れば:幻想にて
第四章、幕間:爛れた部屋 その2 ※エロ注意
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何か切欠が無いかって探して、それらしいのを記憶から探してみたんだけど、結局駄目だった。あなたが誰かと仲良くしているのを見ていると、何時の間にか胸が苦しくなって・・・今思うと、これって他の女性への嫉妬だったのかなぁ、なんて。・・・馬鹿な女で、ごめんね」
「だったら俺はそれ以上の馬鹿だよ。コーデリア様に待っててくれだなんて言って、地方で別の女性と仲良くしたんだから」
「そうね。馬鹿二人が並び立てば、一緒に馬鹿をするのは自然な道理みたいなものよね」

 二人は寝台の傍で手を交わす。背徳を犯した者同士の弱弱しい握手であり、自らがやらかした事の重大さを確かめ合うように湿った指先を絡めている。二人が犯したのは、間違える余地もない犯罪行為であったのだ。姦淫の罪は王国では重罪であり、男子は死刑か去勢、女子は流刑か監禁が常である。

「・・・事実を言ったらコーデリア、悲しむだろうな」
「・・・裏切り者だね、私達」
「ああ。許されない事を犯してしまったな、本当に」

 深く自嘲するように言う慧卓の横に、アリッサは身体を預ける。頬を身動ぎさせれば唇が触れ合う距離であるが、今の二人にそのような真似をする気は無かった。心中に蟠るのは王都に渦巻く為政者の怒りではなく、心より慕う少女の悲愴な表情である。碧と黒の瞳が、それぞれ交わる事無く、何も映らぬ天井を見詰めていた。
 幾分かの沈黙を挟んで、再び静かに囁きが交わされる。 

「ねぇ。約束して。王都に着いたら、コーデリア様にこの事を正直に打ち明けて」
「・・・いいのか?」
「うん。あの人の目が届かない場所で裏切ってしまったんだから、それなりの罰を受けなくちゃ。・・・ごめん、ケイタクが一番重たい罪を受けるのを承知で頼んじゃって。自分勝手な事を押し付けているのは分かっているけど」
「俺の事なんて気にするな。もとはといえば俺が原因なんだから、俺は同罪だ。法の精神に則って、罰を受けなくちゃならない。俺等は騎士だからな」
「・・・背徳の騎士が、二人揃って罰を受ける。きっと王都を賑やかすわね」
「まぁ、そうだろうな」

 一度は自分を温かく迎え入れてしまった人々の期待を、このような形で裏切るとはなんとも恩知らずな事か。どんなに都合のいい解釈を取ったとしても好意的な結末を想像できない。都の人々のみならず、仲間や友人達、そして他の何よりの恩人の期待をたかが一度の行為で無碍にする。胸中に生まれた考えが、重たく彼の心に伸し掛かる。
 しかしそれであっても、自分はこれからも罪を犯してしまうだろうと慧卓は予感していた。この八方美人な性格が他者の思いを無視できるとは思えないのだ。流し流され、結局は行為に耽る。況や悲惨な最期が待っていると知ってしまえば、それを我慢するような理性は、慧卓にはまだ備わっていないのだ。

「・
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