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王道を走れば:幻想にて
第四章、幕間:爛れた部屋 その2 ※エロ注意
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うな思いを持つが、しかし不審に思う所もあった。対面するアリッサの美顔には、諦観すら感じられる影がひっそりと差していたのだ。手元から離れていくような予感がして、慧卓はつい声を掛けてしまった。

「・・・アリッサさん、俺ーーー」
「言ってみただけだ。返事はしなくてもいい。・・・お前にはコーデリア様がいるんだから。お前は王都で、コーデリア様と・・・」

 深い碧の瞳が無表情となり、ついと慧卓から逸らされる。そしてそのままアリッサは席を立ちあがろうとするが、手首をがっしりと掴まれて硬直する。とても先程まで疲弊して眠っていた者とは思えぬほどの強い力に彼女は微かに瞳を開き、胸の鼓動が大きく弾けるのを感じた。

「っ、どうした?」

 瞳を向けて、アリッサは意識を奪われた。一振りの剣のように凛とした彼の表情がそうさせた。耳元で心拍のばくばくとした音が聞こえ、それを掻き分けるように慧卓の言葉が彼女の心を貫いた。

「アリッサさん。俺の事を、軽薄な奴だと、分別の付かぬ猿だと思ってくれて構いません。でも言っておかなきゃいけない気がしたんです。だから言いますね」

 ーーーアリッサ、好きだ。
 
 その言葉を聞き、アリッサは暫く閉口する事が出来なかった。言葉が現実のものであると理解するのに幾秒か費やされ、そして胸の内に落とし込まれた瞬間、アリッサは喜びとも悲しみともつかぬ複雑な顔付きとなる。

「・・・どうして、言ってしまうんだ。聞きたくなかった。言葉にするから意識してしまうのに」
「・・・聞かせたかったんだ。俺の心を」
「そうであっても言うべきじゃないっ!お前には、コーデリア様がいるのに・・・なんで、私まで好きになるんだ・・・馬鹿じゃないの、ほんとに。大馬鹿よ・・・」

 ぽつりと零される言葉に慧卓は何も言えず彼女を見詰めるだけであった。アリッサは大きく心を揺さぶられたのだろう、騎士としての仮面は剥がされ歳相応の柔らかな言葉遣いが露見していた。飾り立てる必要の無い素直な物言いこそ、彼女の生来の姿なのだろう。
 アリッサは繊細さを窺わせるように目を細め、慧卓を見返して言う。

「どうして私の事を?」
「・・・一緒に居て、好きになったからな」
「ぷっ。理由になっていないわよ」
「っ・・・好きになるのに、理由なんてあるかよ・・・」
「子供みたいな言い草ね。誰にだって好意を寄せてしまうような感じ。そのうち、キーラも好きになるんじゃない?あの子の純真さに惹かれてね・・・きっとそうなるわよ」
「・・・節操が無くてごめん」
「もう知っているわよ。いやというほど。・・・理由もなしに人を好きになるというのは、分からないでもないけどね」
「・・・そうか」
「・・・私がケイタクの事を好きになった理由なんて、私自身もよく分かってないもの。
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