第六話 〜初仕事〜
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いた。
私は急いで帯の元へ駆け寄る。
『…帯、顔を上げなさい』
『…父さん。ごめん。』
『!?』
『僕にはやっぱ無理だったよ…。何の役にもたてなかった…ッ』
そう言うと帯は涙を流し始めた。
『ごめんなさい…ッごめんなさい…ッ!』
その言葉で完全に頭が真っ白になる。
『貴様ら!!』
『…!?』
『と、父さん!?』
気付いた時には怒鳴り散らしていた。
『こんな子供に向かって大の大人が何十人も寄って集って恥ずかしくないのか!?』
『父さん!違うよ!これは僕が自分から…』
『何とか言え!!』
完全に頭に血がのぼってしまっていた。
もう交渉もくそもない。
ただ自分の息子が何十人もの人間に責め寄られた事実だけが許せなかった。
私は商人の一人に掴み掛かる。
『ご、豪統さん落ち着いてッ』
『よくもぬけぬけとッ!!』
拳を振り上げる。
『いい加減にしてよ!』
バチンッ
『ウグッ!?』
尻に鈍い痛みが走る。
我に返る。
なんだこの痛みは…ッ!
後ろを振り返ると息を荒げながら目の端に涙を浮かべて鉄鞭を構える帯がいた。
…まさかその鉄鞭でワシの尻を叩いたのか。
『父さんは何しに来たんだよ!僕を助けに来たんじゃないでしょ!?しっかりしてよ!阿呆!』
そう言うと帯は問題が解決していないのにも関わらず、緊張から解放された安心感と恥ずかしさのあまり、堰を切ったように泣き始めた。
改めて帯がまだ子供なのだと知る。
たが、その言葉で冷静になれた。
…私はなんて事をしてしまったんだ。
自分の子供可愛さに仕事を忘れ私情で動いてしまった。
…なんという事だ。
掴み掛かった商人に向き直る。
『す、すまん。私は自分の子供可愛さのあまり…』
『豪統さん』
商人に言葉を遮られる。
駄目か。
私は身を構えた。
『あんたも変わらないね』
だが、言われた言葉は自分の予想外の言葉だった。
『あんたが役人に向いてない事くらい、ワシらが一番知っとるよ』
…ん?
どういう事だ?
『何年あんたと付き合ったと思っとるんじゃ。なぁ!?みんな!』
商人が他の商人達に言葉を投げかける。
『…そうじゃな。ワシらはあんたの我儘には嫌と言う程付き合わされて来たからな。今更かの』
『そうかもしれん。別に今日に限ったわけでもないしな』
『あぁ…今回のワシの大損はどうすりゃいいんじゃ…』
『んなもん商人じゃろ?商売にら損得はつきもんじゃ。諦めろ』
『とほほ…』
すると今まで帯を囲んでいた商人達は一斉に散らばり始めた。
…解決したのか?
『豪統さん』
何故かさっきまで
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