第百二十四話 評判その十三
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「それと同じくな」
「そうなのですか」
「他にも歌や服も好きという」
「では茶もまた」
「そうじゃ、知っていてじゃ」
そしてだというのだ。
「嗜んでおるであろうな」
「では」
「うむ、みちのくにも茶はある」
「遠いあの地にも」
「都から離れていても人はおる」
人がいる、そうであればというのだ。
「ならば茶もあるわ。それに」
「それにとは」
「他のものもあるであろう。みちのくもまた天下の内にある」
「ではやがては」
「無論あの地も治める」
やがてはそうするというのだ。
「そうするからな」
「ではもう少しご自重下され」
ここでまた言った柴田だった、茶を飲みながら頑固に言う。
「全く、殿は傾きが過ぎますぞ」
「危うい者には近寄らぬがな」
「では伊達政宗は危うくはないと」
「今はな」
あくまで今はだった。
「この岐阜でわしを刺す様な真似はせぬわ」
「左様でありますか」
「それはそうとじゃ」
ここで話題を変える信長だった、茶と共にある小豆の菓子を見ながらそのうえでこう言ったのである。
「醍醐じゃがな」
「醍醐ですか」
「あれを出してみるか」
「醍醐とは」
服部は醍醐と聞いて難しい顔を見せた。
「あれはどうも」
「よくはないか」
「茶には合わぬかと」
「茶ではない」
今出すものではないというのだ。
「それとは別のものじゃ」
「では伊達に」
「出そうと思っておるがな。それかな」
また言うのだった。
「酪か」
「酪でありますか」
「それはどうか」
今度はこれだった。
「少し贅かのう」
「贅沢ですし」
それにだと返す小寺だった、その眉は曇っている。
「やはりここで出すのは」
「よくはないか」
「茶を飲むのなら菓子です」
それだというのだ。
「今我等が食しておる様な」
「こうしたものでよいか」
「醍醐や酪は癖が強うございます」
「確かに癖は強い」
それも相当だ、牛の乳から作られるこうした料理は素材が少ないだけでなく作ることも難しい、それに癖も強いのだ。
それで信長も言うのだった。
「では止めておくか」
「茶には合いませぬ」
「酒には合うかのう」
信長は酒は飲まない、それで言うのだった。
「酪や醍醐は」
「贅沢なものなのでそれで飲んだことはありませぬ」
滝川が答える、彼は酒も飲むのだ。
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