第二十八話 ご開帳その十四
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「般若湯なんだよ」
「うちのお店にお坊さん来て普通にお肉やお魚食べてるけれどね」
「ああ、もう今はいいんだよね」
「そのお坊さんが言うには出されたものは何でも食べる」
「それが仏教の正しいあり方だっていうんだね」
一つ目小僧は問う。
「そうだよね」
「そう、だからね」
「そういうことだね」
「そういえばクリスマスもお祝いしてたし」
聖花は衝撃の事実を語った。
「サンタさんの服で保育園に行ったりしてたわよ」
「しかも髪の毛剃ってないよね」
「そのお坊さんは浄土真宗だから」
宗派によって僧侶も頭を剃らない。
「そうよ」
「そうだよね」
「うちの常連のそのお坊さんは臨済宗だけれどね」
禅宗の一派だ、その僧侶もだというのだ。
「特にハンバーグが好きで神社にも入り浸っていてね」
「日本だね、そこは」
「そうよね。何か般若湯はビールが一番って言ってて」
「痛風になったとか?」
「気をつけてるらしいわ」
ビールを飲み過ぎると痛風になる、ドイツで国民病になっているのも道理だ。
「実際にね」
「そうなんだ」
「そうなの、他の成人病にも気をつけてるらしいから」
「というかお坊さんなのに節制してないのかな」
「してるからよ」
「ああ、気をつけてるって言ったね」
気にしているから節制している、そういうことだった。
「そうなんだね」
「そうなのよ。まあお坊さんがお店で堂々とお酒飲んでること自体が昔では考えられないことだと思うけれどね」
「それはね。昔は結婚しても駄目だったからね」
浄土真宗以外は公には認められていなかった、だが一つ目小僧はここで言う。
「表立ってはね」
「ああ、そうなんだ」
「そう、そうした人も多いよ」
侠客にも多い。
「実際にはね」
「成程ね」
「こうしたところにもまあ人間ってのが出てるかな」
僧侶の妻帯、それにもというのだ。
「まあお坊さんは女の人に手を出せないから男の子に、ってなってたしね」
「ああ、衆道よね」
聖花がこう突っ込みを入れた。
「それよね」
「そうそう、比叡山とかでもね」
そうした相手はいた、尚これは僧侶の世界に限ったことではない。
「織田信長や武田信玄みたいにね」
「そうだよ、まあ中々完全に清潔とはいかないよ」
人間の世界ではどうしてもだ、愛実と聖花は妖怪達からそうした話を聞いてそのうえで人間世界のことをまた一つ学んだのだった。この日はそうした日になった。
第二十八話 完
2013・3・8
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