不良スライム
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名残惜しそうな少女と別れて、スラ子は意気揚々と歩いていた。
それもそのはず。
抱き抱えているのは薬草。
1食1個として、御馳走が6食分もあるのだ。
「キュー♪」
いつもの水場で、水をたっぷり飲み、薬草を美味しく頂く。
想像して、じゅるりと涎が出る。
ニコニコ笑顔も止まらない。
まさに幸せの絶頂だった。
しかし・・・。
そんなスラ子に、邪悪な影が忍び寄っていた。
「ギュー(待ちな、そこの同族)!」
「キュ?」
後ろを振り返ると、スライムが3匹いた。
身体に十字の傷のあるスライム。
太って動きの鈍そうなスライム。
眼鏡をかけた賢そうなスライム。
「キュー!」
この3匹をスラ子は知っている。
コルット地方のスライム一族の中で、不良と呼ばれている問題児。
水場を独占したり、草を横取りしたり、無意味に転がる。
えっ?
転がるのは別にいいじゃないかって?
とんでもない。
周りの邪魔になるし、間違って踏み潰したら・・・気まずい。
「ギュギュー(人間みたいな姿しやがって)!」
十字の傷のあるスライムが、ギロリと睨む。
不良達のリーダー格で、名前はスラ吉。
人間と戦って、3度も勝利した事がある強者だ。
「おやおや、スライムとしての品性が足りない様ですね。」
眼鏡をかけたスライムが、人間の言葉で嫌みを吐く。
スライム一族で、10年に1匹と言われた天才児。
名前はスラクック。
「ギュー(こいつ、薬草を持ってるゾ)。」
太ったスライムが、薬草を見て興奮する。
名前はスラ太朗。
力自慢で、体格も大きく、食欲旺盛なスライム。
「ギュー(薬草をよこせ、そうすれば見逃してやる)。」
ニヤリと笑い、スラ吉がスラ子に近寄る。
昔のスラ子なら薬草を渡し、一目散に逃げただろう。
でも、今は決して逃げない。
謎の木の実は身体だけでなく、精神にも変化を与えていた。
「キュー!」
スラ子は薬草を地面に置き、ファイティングポーズをとる。
逆に動揺したのは、スラ吉達の方だ。
自分達に刃向かう同族がいるとは、夢にも思っていなかった。
スラ子の戦いが始まる。
後に語られるコルット地方の戦い。
その名も・・・・・・薬草防衛戦!
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