ALO編
episode6 運命という名の偶然2
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れを聞く勇気は無かった。こちらの世界に帰ってきてすぐの時も、今この時も。ははは。何を言っているのか、俺は。知らなければ、それは現実にならないとでも思っているのか。そんなことはないと、嫌ってほど分かっているのに。
深い溜め息。降りた沈黙を続けない為、とりあえず口を開き、
「……悪かったな。聞きにくいこと、いろいろ教えて貰って、な」
「いや、それは構わんが……」
「でもまあ、俺が………っとちょっと待て、お前今なんつった?」
「構わん、が、だが?」
「そんな直前じゃねえ。……キリトと連絡が付くのか!?」
あることに思い至って、思わず身を乗り出した。
『黒の剣士』、キリト。あいつなら、俺の映像データ集の中にあるあれが本物か、分かるかもしれない。慌てて鞄の中から端末を取り出し、電源を入れる。いつもは喫茶店でのんびり一服しながら記事を書くために使っているが、別に映像が見れないわけではない。進歩した端末は流石の速度で起動し、俺がALO世界で写し取ったスクリーンショットをそのウィンドウに並べていく。
そのうちの一枚をクリック、問題のスクリーンショットが広がり。
「なんだオイ……って、こ、コイツはっ!?」
カウンターのエギルに見せた瞬間、いかつい顔がアホみたいな驚き顔に変わった。
◆
写真を前に、二人で検証をする。そう言えば、《リヴァイブ・リング》の値段を検討する時もこんな感じだったな。あーでもないこーでもないといいながら、画面をいじり回す。俺も一応そういう業界に努める者として画像加工は苦手じゃないが、エギルの知識もなかなかのものだ。
「やっぱ、似てる、か……」
「確信は無い、がな。お前さんの言う通り、キリトならすぐに判別するだろう。ちょっとまだ画像の引き延ばしが雑だから、俺が自前のソフトで手を加えて終わり次第送る。遅くても明日の朝には出来る、はずだ」
開かれた画像は、世界樹根元の街アルンから俺が撮影した写真の一枚。
五人がかりでシステムの抜け穴を突いて撮った写真は手伝ってくれた四人に報酬がわりに配った(いくらかはネットに既に上がっていた)のだが、その一枚だけは配らなかった。俺の鍛えあげられた《索敵》スキル、そしてあの世界で培われたゲーム勘が、「これは何かヤバいものだ」と叫んでいたからだ。
確認した結果、俺の勘は間違ってなかった。
撮影して、原画は小さな欠片の様な人工物があるようにしか見えなかったが、それを家の端末で引き延ばしてみると、映っていたのは俺の予想通り……いや、予想以上にヤバいものだった。映っている……ように見えるのは、金色の鳥籠の中に囚われた、美しい妖精の姫君。その物憂げな、悲しげな横顔は。
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