ALO編
episode6 運命という名の偶然
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やたらと晴れ渡った空は、季節外れに俺の肌を焼く。もともとどちらかと言えばカンカンに晴れた日よりは適度に曇ったほうが好きなタイプであり、加えて二年間の異世界生活では完全に夜型人間であったことも相まって、今では俺は外に出ることになかなかの抵抗感を感じるという引きこもり道に片足突っ込んだ人間になりかかっている。
しかし、自分の好みはともあれ、しなければならないことはしなければならないわけで。
(ま、それでも歩くんだがな……)
リハビリの帰り、俺は必ず散歩……というか、放浪することにしている。こうして自分の普通のペースの徒歩を体に覚えさせていないと、ふとした拍子に足がすぐに速くなってしまうからだ。……まあ、あれだけいろんな世界をウロウロしていれば日常生活の活動強度がごちゃごちゃになっていても不思議はない。結果、ゲーム内のつもりで歩いていて知らぬ間に息切れしていたこともある。
当分この癖は抜けないのだろう。
(だが、ね……)
体は、以前より格段に軽くはなっている。
単純な運動能力なら、あの世界へと行く前である三年前よりも増しているだろう。
(だからなんだってわけでもねえがな)
とりあえず、今日もいつものノルマである時間の放浪を終え、手近な喫茶店へと入った。
特に考えもなく、目についた小さな喫茶店……『ダイシー・カフェ』へと。
◆
世の中には、運命ってものがあるらしい。あるらしい、が、俺はさして長くはない人生の中での経験を通して、運命って奴にも二種類ある様に考えていた。一つは、「必然から来る運命」。例えばVRワールドジャーナリストである俺が、その最も有名タイトルの一つであるALO世界へと旅立ったのは、ある意味で必然だ。そこでの出会いや発見を運命と呼ぶなら、それは来るべくして来た運命と言えるだろう。
そしてもう一つは、「偶然の運命」。何の因果関係も無く訪れる、唐突な出会い。今回は間違いなくこちらの運命に属するだろう。そしてこちらには、もう一つの名前が似合うかもしれない。
奇跡、という名が。
◆
「いらっしゃい」
深みのあるバリトンの声が、俺の脳を、記憶を揺さぶる。
一瞬で周囲の景色がフラッシュして消え、『あの世界』に帰ったように錯覚する。
―――第五十層主街区アルゲード、その無数の店の一つの、雑貨屋。
たっぷり五秒は硬直した俺に、声の主が訝しげに視線を向ける。
同時に、俺も店主を見やる。
見間違えるはずもない、特徴的な外見。
褐色の肌に、迫力のある顔、見事な禿頭。
「……エ、エギ、ル……?」
呆然として呟き、はっと思いなおした。エギルはこれ以上ないくらいに分かりやすい外見で
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