伝えるということ
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いか分からなくなっているのが分かる。内心冷や汗をかきながら松野がいろいろ考えていると佐天がいきなり声をあげた。
「……あっ!!」
「え?どうした?」
「猫がいる!」
佐天がそう言って近くの公園に入っていく。松野も見てみるとそこには確かに猫が1匹いた。
「可愛い〜!!」
「本当だ。可愛いな…」
「迷子かな?」
「首輪ついてるから飼い猫じゃないか?」
「あ、ホントだ。迷子になっちゃったの?」
佐天が猫を撫でながら話しかけているのを見て、松野はいつの間にか普通に会話していることに気づく。
(なに緊張してたんだろうな、俺は……)
松野は小さく笑う。結果は分かってるんだ。ただ自分の気持ちを口にするだけじゃないか。
「松野?」「なぁ、佐天。もう1回だけいいか?」
松野の様子が変わったことを不思議に思った佐天に声をかけられ、松野は真剣な顔で言う。佐天は猫を抱き抱えながら真剣な顔で立ち上がり、2人は向かい合う。
「1回言ってるけど、もう1回だけ伝えます。俺は佐天が好きです。付き合ってください。」
松野は自分の気持ちをはっきり口にして伝える。それを受け止めた佐天は、
「気持ちは嬉しいんだけど、今は付き合うとか考えてないから……ごめんなさい。」
と真剣に考えたうえでの答えを返す。松野はそれを聞いて小さく、だが深く息を吐く。
「ホントに気持ちは嬉しいんだよ?でも……」
「ああ、うん。いいって。ありがとうな。もう1回聞いてるから分かってたし。」
松野はそう言って笑う。
「……まだ友達として一緒にいれるか?」
「そ、それはもちろん!あたしたちは友達だよ!」
「良かった……」
「にゃー?」
2人の真剣な空気が緩んだのが分かったのか猫が鳴き声をあげる。真剣な話をしてた間もずっと黙って佐天の腕の中で大人しくしていた猫がこのタイミングで鳴いたのがなぜか面白くて2人は笑う。そして顔を見合わせてお互いに口をひらく。
「これからもよろしくな、佐天。」
「うん。よろしく、松野。」
そして、2人は猫を抱えて公園を出る。公園に入る前の気まずい空気は跡形もなくなっていた。
「この子どうしようか?」
「う〜ん…明日にでも初春に相談してみる。その間はあたしの家に連れて帰るよ。」
「そっか。じゃあ遅くなっちゃったし早く帰るか。」
「うん、帰ろー!」
「にゃー!」
またもやタイミング良く鳴いた猫に笑いながら、2人は帰路につく。こうして松野は自分の気持ちをはっきり口にして伝え、気持ちに整理をつけて前を向いて進みだした。
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