第三話「散歩とゴブリン」
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ないのだ。こうしてたまに散歩で気を抜かないとストレスが爆発してしまうかも……。
すでに手遅れかもしれないがそれでも俺はただの子供の演技を続ける。こんな俺を愛して慈しんでくれる、他ならない両親や屋敷のみんなのために。
「この時が一番生き返るよなぁ〜」
なにせ娯楽がろくにない世界だ。気晴らしに散歩でもしないとやっていけない。
「まあ、いずれ冒険者になって世界を旅する予定だし、それまでの辛抱かなぁ」
この世界には異世界定番の冒険者という職がある。
もうこれだけで説明はいらないと思うが、念のために説明すると、遺跡や魔窟を探索して一攫千金を狙う者たち、もしくは単純に世界を旅して見聞を広めようとする者たちの総称だ。
危険や死が付きまとうため一世代も続かないといわれており、その多くが屈強な男たちで満ち溢れている世界でもある。
女の人も中にはいるが、それでもコマンダー! とでもいうようなムキムキな人で、若くて美人な人は全体の三割も満たない。
将来、俺はこの冒険者になって世界を旅する予定だ。この閉ざされた世界で唯一の娯楽がそれっぽいからな。自慢じゃないが実力の方は問題ないし。
「それにしても空気うめぇなー!」
我が家は都会から少し離れた場所に位置する。人口もそこそこで自然に囲まれたよい土地だ。いい意味で田舎のようなところと言えばわかるかな?
木々に囲まれた道を悠々と進む。気分は上々で鼻歌なんかも歌ってみた。
「にしても、やっぱ精霊は見えないかー」
これだけ緑に囲まれていれば精霊の一匹や二匹いるのが普通だが、俺の瞳にはそれらしき影は映らない。神眼が開くのはまだまだ先になりそうだ。
「ふんふんふーん♪」
エスカリボルグをぶんぶん振り回しながら道を進む。
小鳥のささやきが耳に心地よい。とても清々しい気分だ。今日はいいことがあるかも。
「ん?」
茂みの向こうからカサカサという音が聞こえた。動物かなと思いそちらを見ると、
「グギャ?」
茂みから顔だけを出した一匹のゴブリンがいた。
――なんでゴブリンが? 迷子か?
ゴブリンは魔族に分類される種族で好戦的だ。多くは数人から十数人単位で群れを成して行動している。
こんな近くにゴブリンがでるなんて聞いたことがないんだが……。
「……」
「……」
茂みから顔だけをのぞかせているゴブリンと、その緑色の顔を眺める木の棒を持った男の子。
なんともいえない空気が流れた。
「ギャギャー!」
「うおっ!?」
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