第三話「散歩とゴブリン」
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如く飛ばされたソースは狙い違わず、シアンの目に直撃した。
「――っ!? ぐぁあああ! め、目がぁ……!」
ふん、俺に女装趣味はないっての。この格好は周りが勝手に押し付けてくるだけだっての。
つうか三歳児に言う言葉じゃねぇよ。
「あらあら。シアンったら、そんなに急いで食べるから」
ほわほわした母様がおっとりとそう言った。
「……! このお魚おいしー! ねえねえ、なんてお魚さんなの?」
鯵の塩焼きにも似たどこか懐かしい味だ。見た目はムニエルのような切り身だが。
背後に控えたメイドが一歩進み出た。
「ツヅミというお魚です、トラヴィス様」
「つづみさん?」
「あら、トラちゃんはツヅミの塩焼きが気に入ったの?」
「うん! すっぱくておいしーの!」
愛嬌たっぷり可愛げ満載に言ってみたが、俺を知るジジイたちが見たら爆笑するか吐き気を催すだろうな。自分でもちょっとキモッと思ってしまった。
† † †
その後も楽しく談笑しながら食事をして自由時間となった。勉強の時間まであと二時間弱ある。その間は暇つぶしも兼ねて日課となりつつある散歩にでも出かけよう。
「お外いってくるー!」
「気を付けて行ってくるのよ。怪我のないようにね」
「大丈夫だとは思うが、森の方には近づかないようにな」
「はーい」
一旦部屋に戻り外に出かける準備をする。こんなふりふりドレスじゃ外を散策するには不便だから動きやすい格好に着替える。
メイドさんに手伝ってもらいシャツにズボンの格好に着替えて、念のための護身用武器【聖剣エスカリボルグ】をどこからともなく取り出した。
【聖剣エスカリボルグ】とはレベル九十九の勇者が装備する武器で、絶大な力を宿した剣だ。見た目は完全に【ただの木の棒】だが、ステータスはバグレベルである。
黒いマジックで拙い字で『せいけん・えすかりぼるぐ』と書かれた剣を手に玄関に向かう。すれ違うメイドさんに微笑ましい目で見られたのは気のせいだと思う。
外に出た俺はしばらく歩き、周囲を見回した。
目に見える範囲には人がいないのを確認すると大きく息を吐く。
「あ゛あ゛〜〜! 超づーがーれーるぅー!」
ぷはぁー! っと肺の中の空気を一気に吐き出す。
家にいるときは人目があるため気を抜くことが出来ない。子供らしい――実際子供らしいかどうかは別として――演技をする必要があるため、素の自分を出す機会があまり
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