第三話「散歩とゴブリン」
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† † †
「本日のメニューはマカロフのハープ漬け、ベロニッタの蒸し焼き、アーモングラフィのサラダ、デザートにロトフでございます」
ワゴンを押して入室してきたメイドがせっせとテーブルに朝食を乗せていく。貴族の食事としては豪華とはいえないが平民の食事風景よりは煌びやかだ。
香ばしい香りが鼻孔を擽り食欲を誘った。
シアンはよだれが出そうなほどベロニッタの蒸し焼きを凝視している。これ、お前の好物だもんな。
背後に回ったメイドが俺の首に布きんを回してくれた。
「ありがと」
「いいえ、これが仕事です故」
ニコッと笑顔とともにプロ魂を見せるメイド。我が家のメイドは輝いておる!
「どうぞトラヴィス様」
メイドが手渡してくれたフォークとナイフを手に取り、シャキーンと構える。いつぞやの惨劇を思い出したのかレオン兄が若干顔を青くして言った。
「トラ、それはもういいから、な?」
「大丈夫ですよ兄さま。あれから一年もたったのです、さすがに力かげんは覚えました!」
見よ、このナイフ捌きを!
優美な所作で以て音もなくベロニッタの蒸し焼きを切り分ける。もう俺は一年前の俺ではないのだ!
「まあ! トラちゃんお上手!」
「やればできるじゃないかトラ!」
「見直したぞトラ」
パチパチと小さく拍手をする母様と大きくうなずく父様。レオン兄様も我が事のように喜んでくれた。見直したということは、元はダメダメってことですか兄様?
「ふん、普通それくらいできて当然なんだ。それになんだ、切り方が雑じゃないか」
ぐちぐちと文句を言う長男。三男はここでズバッともの申します。
「兄さま、ハープがこぼれてますよ?」
「おわぁっ!」
小さく悲鳴を上げるシアン。その胸元にマカロフから零れ落ちたハープの汁がべっとりとくっ付いていた。
いそいそとメイドがシアンの胸元を布きんで拭う。その様子に俺は小さな声をもらした。
「…………っぷ、ざまぁ」
「トラ?」
「なんですか兄さま?」
ニコニコフェイスをレオン兄に向ける。一度首を傾げた兄さんは「いや、なんでもない」とつぶやくと自分の食事に戻った。
「くそっ……! トラヴィスめ、僕に恥をかかせやがって……。女装趣味の変態野郎のくせに生意気な」
――指弾ッ!
行儀悪いがソースを絡めた指をものすごい速度でピンッと弾く。
弾丸の
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