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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第四十話 独立混成第十四聯隊と将軍達の憂鬱
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帝国〉に置かれていた在外公館からの調査書に目を通す。この書類にはそれなりの店の個室とその両隣まで借り上げただけの価値があったと馬堂中佐は軽くなった財布をさすりながら思った。
「――良く目を付けたものだな。」
 ――偵察部隊として実験部隊――水軍の名を使うのならば龍士隊だったかな?それを1000騎もまとめて運用するのか、大層なこった。

「昨年に届いた報告書だそうです、魔導院からの報告を聞いて情報課の資料室から慌てて探し出したそうで」
 ――不味いな。捜索・伝令でこいつを使われると導術利用の優位である即時性が消滅とは言わないがかなり揺らいでしまう可能性がある。いや、あるいは――
 脳裏で光帯の無い世界の知識を引っ張り出そうとしながら尋ねる。
「――この部隊が鎮定軍に編入された事は確かなのか?」

「北領に導術使用の際に使われる――術波でしたかね?兎に角ですね、翼竜のそれが大量に感知されたそうです。
そこらへんは詳しくないのですが魔導院の術士が太鼓判を押しているのだから間違いないかと」
 ・・・・・・泣きたくなってきた。

「あと、おまけですが、良い知らせと悪い知らせがあります。
どちらを先にしますか?」
村雨中尉――特設高等憲兵隊の私服憲兵が不敵な笑みを浮かべて云った。
「――飯を先に済ませたのは正解だったな。」
 胃が痛む話になりそうだ・・・。



六月十八日 午前第十一刻 兵部省大臣官房総務課執務室
大臣官房総務課理事官 馬堂豊守准将

「お忙しい処、失敬する、理事官殿。時期を見計らおうと思もったのだが、どうも何時もお忙しそうだからな」
 軍監本部情報課次長である堂賀准将はそう云いながら椅子に体を預け、細巻をふかしている。
「次長自らとは珍しいですね。大臣用の文書ならもうそちらの参謀も目を通した筈ですが」
 先任であり、年も上である堂賀相手ゆえ、階級は同じでも豊守の口調は至極柔らかいものであった。
「あぁ、官房総務課――陸水両方の高官に通じている貴官に相談したいことがあってね。
まぁそれは後にしよう、それにしても着任早々に随分と大仕事を熟したものだね。〈皇国〉陸軍の主力を集結させるとはそれこそ〈皇国〉初ではないかな?」

「えぇ御蔭様で仕事には困ることだけはないですな」
 陸軍・水軍の各部局との調整だけではなく、それを予算認可権を握っている衆民院・大蔵省天領の行政を担っている内務省を相手に交渉を一手に担っている部署である、その為、五将家の分家・陪臣のなかでも優秀な官僚組がそろって配属される。

「これは御存じだと思いますが後備の動員は中々通らないのですよ、常備の完全動員すら完了してない鎮台がありましてね。
国費を用いて後備の動員をするには鎮台の努力が不十分だとゴネておいででしてね
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