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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第四十話 独立混成第十四聯隊と将軍達の憂鬱
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たずとも挙用する事も諸将家時代からの慣習である、今もなお最精鋭の立場を保つ所以の一つだろう――である。
 ――なまじっか餓鬼の時分をから世話になっているからこそ分かるのだが、無能な者こそ居ないが万事は無常だ。あの場は旧き良き将家に過ぎる、若殿がこれからの戦争と向き合うには優しすぎるかもしれない――間違いを抱えたまま進んでしまう程に。


六月二日 午後第四刻 皇州 粟津内 駒州鎮台司令部官舎 司令官室
駒城鎮台参謀長 益満淳紀少将


 五十がらみの騎兵将軍は例の混成聯隊に関する書類に目を通すと思わず感嘆の言葉を発した。
「随分と念を入れてますな。」

「あぁ、本当に馬堂家の人間らしいやり方だ。自分が学ぶよりも誰が何を知っているのかを把握して人を使う」
 保胤も面白そうに人務表を見て云った。
「身に覚えはありますな。」
 敦紀も、彼の先達である豊長が猛牛の様に彼方此方に駆けずり回っていた時を思い出して言った。
怪しげな新設の憲兵隊に文武を問わず優秀な者を取りこみ、軍事警察へと鍛え上げる事で、兵部省の権威を形作るのに一役買っていた。

「練兵も順調なようだ、中佐は良くやっている。
実戦でも上手くやっていた事だ、これならばそうそう負けはしないだろう」

「閣下、何事にも欠点はあります。それに、こうした編成は実験段階です、過信は禁物です。
戦では時にただ一度の不覚で全てが菓子細工の様に脆く崩れるものです」
 ――単隊で多勢と渡りあえる部隊とそう言えば聞こえが良いが諸兵科連合部隊は時に酷く脆いものである。
例えば馬堂中佐が帰還後に提出した戦闘詳報にも記しているが、独立捜索剣虎兵第十一大隊が天狼会戦後の潰走時に尤も恐れていた事は騎兵砲の損失であった。
かの部隊が所有していた砲は僅か四門程度だが、その四門の砲が戦術上で多大な役目を負う事が前提となっていたからである。戦場で上手く主導権を握れば多勢を相手にしても渡り合えるだろうが――下手を打てばあまりにもあっさりと潰れてしまうであろう、と駒州鎮台参謀長は危惧しているのである。

「だからこそ、経験のある彼をあてたのさ。彼ならば上手く扱うだろう。」
 保胤も真摯に頷いた。彼が新任少尉だった東州内乱時には益満少将が直属の中隊長だった。篤胤からも武人として厚い信頼を寄せられており、保胤もまた同様の信頼を寄せている。

「はい、閣下。ですが何事も限界はあります。彼にも、我々にも」

「そして<帝国>にも、だな。
どうにかして〈帝国〉軍の限界まで此方を保たせなければ。軍監本部もどうにかして取り纏める必要がある。どうにかして堂賀准将の一派を抑えたいところだが是々非々の一点張りだ、執政殿と同じで掴み所がない、今のところは協力的だからまだ良いのだが」
 算段をたてている保胤
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