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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第四十話 独立混成第十四聯隊と将軍達の憂鬱
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長である馬堂中佐は当然のように把握している。
 ――無能な者は一人も居ない、居るとしたら此処に座っている馬鹿者だけだ。
 そう自嘲するからこそ、彼は幕僚人事には神経を尖らせたのだ。
「確かに、適性の問題なら聯隊内で回せば分かるが――その時間もないとなると下士官の入れ替えが適当かな?
だが若殿様に初期の段階で随分と我儘を言ったからな――」
まずは長山大尉の意見を聞こうと首席幕僚と併せて呼び出す。

「間に合うように手配は出来るとして、この入れ替え案。君達は適当だと考えるか?」
「はい、聯隊長殿。自分は適当な処置かと。」
大辺首席幕僚が頷く。人務の長山大尉も間に合うのならばと頷いた。
「自分としては問題のある一部 将校の入れ替えも提案します。
勿論マシな者達ではないと困りますが」
 訓練幕僚として手を焼いているのか武山大尉が随分と大胆な提案をする。
だが、そうだな、それも一つの考えだ。

「下士官だけではなく、将校も入れ替えるのか?」

「――どうにもならないのは居ますからね」
 副官の米山も苦笑いを浮かべて呟いた。
「あぁ確かに――この部隊は新たな運用法の確立も目的の一つだから余計に前例主義者は性質が悪いからな。相分かった、それでいく。」

 ――可能なら都護の常備が良いな、前線に出ない癖に練度は高い。都護鎮台はこの国の真の近衛なんて冗談まじりで言われる部隊だ。練度は折り紙つきである。

長山大尉に書面の製作を命じて執務に戻らせる。

「第一大隊は常備大隊だけあって問題なし、聯隊捜索騎兵中隊も元々練度が高い部隊だからさしたる問題はなし。
新設した捜索剣虎兵中隊の訓練は秋山大尉が直々の御指導を賜っている、か。
――西田達にも苦労してもらうか。」
 鉄虎大隊の訓練に関しては、幸い問題は起きていなかった。新設した第四鉄虎中隊に第十一大隊の生き残りを基幹として配置したのだが、秋山大尉をして感嘆する程の速度で練度が上がっている。
剣虎兵幕僚として配属されている秋山大尉は新城が剣虎兵学校教官をやっていた時の同僚で馬堂中佐が新城少佐に砲兵将校と幕僚の推薦をした際に礼代わりに推薦した男であった。
「聯隊砲兵大隊も遅滞なし、か。導術観測に頼りきりなのが心配だが・・・その按配も含めて俺次第かな。」
 元々砲兵幕僚の大山大尉は龍火学校を優秀な成績で卒業しており、富成中佐が推薦したほどの人物である。彼の指導の下で練度が上がらない筈がない。
 ――よしよし、こんなモノだな。

「後は若殿次第――いや、参謀部の人達次第か。」
 思わず溜息が出る。
 ――正直、心配になるくらいに駒州鎮台は“古き良き諸将時代”の慣習を残している。
 司令部は特にその度合いが強く、参謀達の大半が駒州公爵家臣団・領民――優秀ならば位階を持
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