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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第四十話 独立混成第十四聯隊と将軍達の憂鬱
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幕僚の秋山大尉も意見を述べた。彼は衆民出身であるが、剣虎兵学校の教官を務めた経験もある、昨年は捜索剣虎兵中隊を率いて東州の匪賊討伐を経験している最古参剣虎兵将校だ。連隊鉄虎大隊の長である棚沢少佐も以前の教え子らしく本来ならばとっくに中佐にでもなっているべき将校だ。
「首席幕僚殿は如何にお考えですか?」
 困ったものだと言いたげに芹沢大尉が大辺へ話をふった。

「――そうだな、私としては第二大隊には当面のまま、訓練計画を消化してもらうつもりだ。
追加の訓練でどうにか仕上げるべきだと思う。だが早期に解決するのならば手っ取り早く問題になってる部分を挿げ替える事を進言すべきだろう。
まぁ、決めるのは聯隊長殿だ。場合によっては外と入れ替える事もあるかもしれない。
我々は聯隊長殿の構想を実現させる手段を構築するだけだ。その為にも聯隊長殿の判子待ちの書類を増やそう――聯隊長殿の御帰還を歓迎せねばならないからな。」
 大辺が薄い唇を歪めると執務室に忍び笑いが響いた。



同日 午後第四刻 独立混成第十四聯隊 聯隊本部官舎 聯隊長室
独立混成第十四聯隊 聯隊長 馬堂豊久中佐



 訓練概況の視察から戻った豊久が執務室に戻るとまず目に入ったのが未決の棚に詰まれた書類の塔であった。

  ――あれれ、おっかしーなー.午前中の内に片付けた筈なのにまた戻ってきたら随分と量が増えている気がするヨ?

 などと豊久は頬を引き攣らせているが、これは彼が選抜した将校団の課題処理能力の産物である。
もっとも、彼らを統括する以上は、豊久も彼らの能力を活かすためには相応以上の苦労が伴うのは必然であった。
 ――粟津から帰ってきたらまた山脈が出来ているんだろうな。
 脳裏をよぎった光景に新編部隊の聯隊長は少しばかり心が折れそうになった。

「この書類を片付けなくては死ぬんだ。
この書類を片付けなくては龍州あたりで死ぬんだ。
この書類を――よし。」

挫けそうになる心を厭な現実以上に厭な未来を突きつけて建て直す。
 ――なんか内地に帰ってきてからこんなのばかりだな、と言うか帰ってきた途端に手紙の山だったし。
まぁ、戦時の佐官なんてそんなものか。まったく、碌なモンじゃない、軍人とは予算不足を愚痴りながら演習計画を練ったり辺境警備したりするものだろうが。

 脳内で愚痴りながら書類山脈を崩さないように書類に目を通して判子を押す。

「やっぱり問題は第二大隊か・・・。」
 鋭兵――施条銃を全員が装備している事は嬉しいのだが――どうにも将校を含め、経験不足の者が多い。
 付随している幕僚達の提案書に目を通す。第二大隊の一部を入れ替える提案が記されている。
「彼らがここまで言うって事は相当なんだろうな」
 彼らの能力を聯隊
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