第四十四話 不老不死その三
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「そうなっている。ただしだ」
「ただし?」
「空自さんは両方から生まれた」
工藤は航空自衛隊の出自についての話もはじめた。
「陸軍と海軍からだ」
「両方からですか」
「陸軍航空隊と海軍航空隊が一つになった」
既に陸軍も海軍も解体されていたが警察予備隊発足の時に空の部門もできそこに双方が入ったというのだ。
「例えば幕僚長だった源田実だが」
「何処かで聞いたことがある名前ですね」
「海軍の航空参謀で後に国会議員にもなった」
「政治家でもあったんですか」
「空自さんではその幕僚長になった」
「海軍出身の人がですか」
「そして陸軍出身者も多かった」
どちらの航空隊からも入ったというのだ。
「そうして形成された組織なのだ」
「航空自衛隊はそうなんですか」
「そうなる。そしてだ」
「そしてなんですね」
「空自さんは出来た。しかしだ」
「敬礼とかはですね」
「他の国の空軍もそうだからな」
世界の慣習に倣ったのだ。敬礼等は。
「そうなった」
「そうだったんですか」
「制服の色は違うがな」
「さっきの人は緑でしたね」
上城は二人の上官のことから話した。
「工藤さんは黒で」
「俺の制服は海自のものだ」
「海上自衛隊のですか」
「海軍の頃からの黒だ」
そして制服の袖には金モールが巻かれている。どの国でも普遍のものとなっている海軍の軍服の配色だ。
「夏には白になる」
「あっ、映画に出て来る」
「白は知っているか」
「あの白い詰襟ですね」
「あれは礼装で普段は略装を着ているがな」
「あの詰襟とはまた違うんですか」
「いつもあの礼装は着られない」
工藤は少しだけ表情を入れた。やや苦笑いになっての言葉だ。
「長袖で暑い。生地も厚い」
「ああ、だからですか」
「礼装はあくまで礼装だ」
普段着るものではないというのだ。
「普段は半袖の略装を着ている」
「そうなんですか」
「だからあの服は滅多に着ない」
これが現実だった。しかも現実はさらにあった。
「しかも一度着ればクリーニングに出さないといけない」
「一回で、ですか?」
「白だからすぐに汚れる」
白い詰襟は一見すると格好がいいがそうした問題もあるというのだ。
「中々難しい」
「一回だけ着てクリーニング屋さんに出すとなると」
「勿論クリーニング屋さんが儲かる」
「そうなりますよね」
「だから自衛隊、特にうちの基地の近くにはだ」
「クリーニング屋さんがあるんですね」
「基地の中にもある」
そこにもあるというのだ。
「そして制服を売る業者さんも基地の傍にも中にもだ」
「経営しておられるんですね」
「ぴったりと寄り添ってくれている」
工藤は少しオブラートに包んで話した。
「そして売ってくれる」
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