回想する姉
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『ついでにノエルも踏んでた』
『おいチクるなよ!バカ!』
『きゃー!なんですって!?兄さん!』
『でもノエルのやつは怪我してなかったし、本もちゃんと新しいモン買って返したんだぜ!?本当だって!』
『へールース兄さんにしちゃ気が利いてるじゃん』
『ノエルはルース兄さんと違って繊細なの!それでショック受けて家出・・・』
『あんたたちぎゃーぎゃーわーわーやかましいんだよ!』
イキナリものすごい轟音がして、家の中なのに砂煙と風が吹き込んできた。咄嗟に瞑った目を開けると・・・な、無い!?入り口のドアが無残に捻り千切り取られてどこにもなかった。その手前に肩をいからせて立っているのが、我が家の法律・最終兵器母さんである。まさに鶴の一声。さっきまでピーチクパーチク騒いでいた兄弟達は即座に口を閉じ、ぴゅっと身を寄せ合ってガタガタと震えた。もちろん、あたしも。
『かわいいこには・・・』
母さんが女とは思えない低いお声で、あたしたちに背を向けたまま、口を開いた。
『・・・かわいいこには、旅をさせろって、諺があってねぇ・・・。ノエルは家出をした。誰も絶対にあとを追っちゃあならない。この話はこれで終わりだ。いいかい?』
『・・・』
いいかいと言われても、誰も恐怖で口を開けない。
『返事ッ!』
『ハイイッ!』
あれから・・・もう五年かぁ・・・。ノエルのことを皆気にしつつも、無事を願うしかできなくて、いつしかノエルのいない風景にも馴染んできて・・・。
でも、こうしてノエルは戻ってきてくれた。5年たっても、あの頃と全く変わっていないノエル。ふふ。やっぱ嬉しいなぁ。家出であれ何であれ、兄弟達が欠けるなんて、よくないもんやっぱり。
そんなことを考えながらてくてく歩いていたあたしは、目的の場所に辿り着いた。
「お、やっぱどこにでもあるのね」
あたしは満足げにひとりで頷くと、立て付けの悪い入り口のドアを押した。
そのドアの上にある、金貨の袋の絵が描かれた看板の下には、こう書かれていた。
『ギルド・ムキムキ』
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