回想する姉
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たよね!それもあったら買ってくるね」
「メロン・・・」
「うん、そう。楽しみにしてて!」
あたしはノエルを元気づけるためににこっと笑って、部屋を出た。よーし、今度こそ、絶対に買うぞー!
あたしは宿を出て、ぽかぽかとした陽気の中を、村の中心に向かって歩く。
ノエルが家出をした日。家出って言っても、書き置きも何もなく、本当に家出なのか、それとも浚われたのか定かじゃなかったあの日。
あたしも兄弟達も今でこそけろっとしているように見えるだろうけど、当時はそりゃあもう、大騒ぎだった。あたしもショックで、おろおろして、皆であとを追おうとしたその時だった。
『落ち着くんだよバカタレ共!』
聞き慣れた怒鳴り声が響いて、一番に家を飛び出した筈のジャンが張り飛ばされて家の中に転がり戻ってきた。
『か・・・母さん・・・』
恐怖に戦いた兄弟達の足が知らず逃げをうつ。ふしゅううううと母さんは人間と思えない息をついて、扉の前に仁王と立った。
『木偶の坊どもが、雁首そろえて、一体何遣ってるんだい?暑苦しいったらありゃしない』
『母さん!大変なんだ!ノエルがいなくなった!』
『・・・で?』
『え?』
『あんた達が何を遣ってるのかって、あたしは聞いたんだけど?まさか女々しく、ノエルのケツを追いまわしに行こうとしてるんじゃないだろうねぇ?』
『母さん!こんな悠長な事してる暇じゃないって!ノエルは浚われたのかもしれないんだよ!』
『家出だよ』
『家出!?ノエルが!?なんで!?』
『うわっ!それロタのせいじゃないの!?昨日ノエルのメシ奪ってたじゃん!』
『ロタそんなことしたの!?ただでさえ食の細いノエルのご飯奪うとかサイテー!』
『サラ!?違う!あれはノエルがいらないってくれたんだ!本当!本当だって!いくら俺でもノエルのメシ奪うような事しないよ!』
『どーだか。ロタを軒先に吊せば案外ノエルすぐ戻ってくるかもよ?』
『いいね。ものは試しと言うしやってみよう』
『兄貴!?やめてくれよそれ100%俺吊され損だよ!それにこの前ルース兄貴もノエルのお気に入りの本踏み破ってたじゃん!そのせいじゃないの!』
『なんですって〜?兄さん!?』
『サッサラ!違うんだあれはわざとじゃなくて・・・!俺の足でかいだろ?チマチマしたもんをいちいち避けて歩けないだろ!?』
『本はチマチマしてないっ!』
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