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東方守勢録
第四話
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……はい」


雛は言われた通り弾幕を止める。弾幕の爆発音と着弾音が消え、辺りは静寂が広がる。

悠斗はその中で微かに聞こえるはずの機械音を探していた。だが、何秒待ってもそんな音は聞こえてこない。

1分待った後、悠斗は大きく息を吐いた。


「もう大丈夫ですね。誰もいません」

「そうですか……よかっ……た」

「雛さん!?」


雛は力を使いすぎたのか、崩れるようにして悠斗にもたれかかっていった。


「大丈夫ですか!?」

「はい……少し立ちくらみが……」

「少し待ってて下さい……」


悠斗はすぐつかくの壁に雛を連れていくと、そのまま壁にもたれかけさせた。


「すいません」

「いや、謝るのはこっちの方ですよ。ごめん」

「いえいえ……それより捕虜の方を」

「ああ」


悠斗は集中力をすべて能力に注ぎ込んでいく。そして、そのまま爆発させるように能力を解き放った。

牢屋の鍵は悠斗の能力を受け、一斉に音を立てて開いていく。その瞬間、部屋の中を歓喜が響き渡っていった。


「これで大丈夫」

「はい……」


やるべきことを終えた二人は、お互いの顔を見ながら笑いあっていた。


「お疲れ様だな……お二人さん」


安堵の表情を浮かべる二人に、一人の男が声をかけてきた。


「あなたは……」

「霧の湖以来だな。看守の兄ちゃん」

「お久しぶりです」


悠斗は男の顔に見覚えがあった。霧の湖で独自に情報収集をしていたころ、よく話していた人だ。どうやら俊司達が霧の湖を攻撃した時、捕虜の人たちはここに運ばれていたみたいだ。

悠斗は安心したのか、安堵の表情を漏らしていた。


「やっぱり、あんたは変わらないな。誰からも話を聞いてくれなかったころから、自分がやるべきことをきちんと考えて行動してる」

「そんなことないです。当たり前のことをしてるだけですよ」

「当り前だからだろうが。ありがとうな」


男はそう言って軽く笑う。その後ろでは、解放された捕虜達がぞくぞくと集まってきていた。


「まだ早いですよ。ここからでないと……雛さん立てますか?」

「はい。でも……少し危なくないですか?」

「そうだな……あいつらか」


先ほどの戦闘中、牧野は試作一号機を数十体設置したと言った。

この部屋で倒したのも十数体にすぎない。通路内にもいる可能性があるうえ、戦闘可能なのは悠斗と雛のみ。捕虜を守り切るには到底無理だった。


「となるとあとは……」

「俊司さん達次第ですね……」


今行動すれば危ない。そう判断した悠斗と雛は、上で行動している俊司達を待つことにした。

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