―ジェネックス Y―
[1/19]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
たとえジェネックスが開催されていようとも、流石に草木も眠る丑三つ時となれば、デュエル・アカデミアといえども原則立ち歩きは禁止とされている。
たまに深夜の散歩をしている生徒とガードマンが現れるぐらいで、日夜デュエルの声が響いているここも、この時間ともなれば虫の声しか聞こえない。
そんな時間の中、俺はオベリスク・ブルー女子寮へと向かう森の中の池で、久方ぶりに釣りに興じていた。
最近は色々あって出来なかったものの、太平洋のど真ん中にあるというこの島の立地もあり、やはり釣りはデュエルとはまた違う面白さがあった。
……まあもちろん、ここには釣りをしに来た訳ではない。
釣りをしている背後から草を踏みしめてくる足音を聞くと、釣り竿やその他を片付けにかかり、代わりにデュエルディスクを腕に差し込んで振り向いた。
背後からの闖入者はガードマンや学生、ましてやプロデュエリストでなく、その聞き慣れた足音から目的の人物だと解っていた。
「……明日香」
「黒崎遊矢。鍵を賭けたデュエルをしに来たわ」
オベリスク・ブルーの女王、天上院明日香の久しぶりに見る姿は、俺の知っている明日香とは似ても似つかぬ人形ぶりだった。
斎王の人形となっていたらしい俺の姿もこうであり、対面したレイや三沢も今の俺と同じやるせない気持ちになったのだろうか。
この場所は一年の時に良く明日香と釣りやデュエルをした場所であるのだが、それでも眉一つ動かさない明日香を見るに、斎王は余程強力な洗脳を施したようだ。
洗脳を自力で解きかけていた万丈目とは違い、今の明日香は身も心も光の結社の一員なのだろう。
「ああ、明日香。デュエルだ……絶対に助けてやる……!」
「助ける? 私は自分の意思で光の結社に従っているのよ?」
明日香の一言に、俺はもう話が通じることはないと悟っ……いや、待て。
三沢に話を聞くならば、本当に人形と化していた俺は何も無駄な言葉は喋らなかったらしい。
明日香のあの言葉からすれば、斎王は明日香を完全に人形にした訳ではなく、明日香本人の意志はまだ残っているということか……?
そうだ、彼女が洗脳された程度で黙って泣き寝入りをする訳がないということを、俺は良く知っているだろう。
それを何だ、救うと息巻いておきながら一人で諦めて……明日香も戦っている筈なのだ、こんな調子では彼女に怒られてしまう。
後はただ、このデュエルに勝つことと、明日香を救うことだけを考えていればそれで良い……!
『デュエル!』
遊矢LP4000
明日香LP4000
決意を新たにした結果という訳でもないだろうが、デュエルディスクは俺に先攻の権利を与えた。
「楽しんで勝たせてもらうぜ! 俺の先攻、ドロー!」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ