第三幕その十五
[8]前話
第三幕その十五
「私は盲目にならないといけないのですね」
「それは何故ですか?」
「愛の為にです」
その為だというのだった。
「私は盲目にならないといけない、笑いながら微笑んで」
「微笑んで」
「滅んでいくのです」
今言った言葉は。それであった。
「それが私の願いです」
「貴女の」
「ヴァルハラの輝く世界よさようなら」
ヴァルハラに別れを告げた。
「誇りの城よ、粉々に砕けよ」
砕けよと。そうして。
「光り輝く神々の壮麗さよさらば。永遠の種族よ」
さらに言うのだった。
「歓喜のうちに終焉を迎えるのです」
「全てがですか」
「そう、全てがです」
言いながらも今見ていたのだった。歓喜の中での滅亡を。
「ノルン達よ運命の絆を断ち切れ」
「時の糸を」
「そう、それもです」
そう言葉を続けていく。
「神々の黄昏よはじまるのです、破滅の夜よ」
「夜もまた」
「湧き上がるのです。そして」
「そして」
「今はジークフリートの星が輝くのです」
神々を捨ててだった。ジークフリートを見ているのだった。
「彼は私に永遠のものでそして」
「そして」
「全ての宝で唯一で全て」
言いながらさらに恍惚となっていく。
「輝く愛で微笑む死です」
「微笑みながら目を覚ました」
今度はジークフリートが言ってきた。
「素晴らしい人よ」
「私への言葉ですね」
「そうです。ブリュンヒルテは生きています」
そう言ってであった。
「ブリュンヒルテは笑っている」
「私が」
「我々を照らす昼に祝福を」
「貴方もまた」
「そうです。ブリュンヒルテの生きているこの世界に祝福を」
彼女と世界を讃えていた。
「彼女は目覚め生きています」
「私がそうして」
「そうです。私に向かって微笑みかけています」
それは彼も同じだった。
「私に向かい微笑みかけてくれるブリュンヒルテ」
「私が」
「光り輝くブリュンヒルテの星よ」
あくまで彼を見ているのだった。
「彼女は私にとって永遠のもので」
「貴方もなのですね」
「そうです。全ての宝で唯一であり全てであります」
二人は見詰め合っていた。これ以上はないまでに。
「輝く愛であり微笑む死です」
「貴方は私で」
「貴女が私で」
二人は同じだと。確かめ合っていた。
「そして永遠に」
「そう、永遠に」
「微笑みましょう」
「この輝かしい死に」
炎は消えその中で微笑み合う二人だった。二人は運命の出会いを果たした。そしてそれはまさに黄昏と曙のはじまりなのであった。
ジークフリート 完
2009・11・20
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ