第百四話 間一髪ってとこだったな
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「セイラ何をしているっ! 早く逃げろっ!」
しかしその声は届いていないのか、セイラは歯を食いしばりながら前を見据えている。
「タイセー! 意識があるんだったら何とかしろっ!」
ミラニはタイセーに向けて叫ぶが、タイセーは苦悶(くもん)の表情を浮かべて魔法を制御しようとしていた。
だが体の力が急速に失われていくのを感じ、立っているのも苦しくなり膝をつく。
(ア……アカン…………セイラ……ッッッ!!!)
必死に『白雷(ホワイトサンダー)』を操作しようとするが、全く言うことを聞かない。
それどころか自分の力を奪い取り、さらに大きく強くなっていく。
「こ、これはマズイです! タイセー選手の暴走した『白雷(ホワイトサンダー)』がセイラ選手を襲う!!!」
ミラニは彼女を助けようと向かおうとするが、『白雷(ホワイトサンダー)』がそれを邪魔するように目の前を横切る。
「だ、駄目だ! もう間に合わないっ!」
「ア、アカンッ! セイラァァァァッ!!!」
タイセーは叫ぶが、まだ動けない彼にはどうしようもない。
ただ愛しい妻が、自分の攻撃に襲われる様を見ていることしかできなかった。
セイラも向かって来る『白雷(ホワイトサンダー)』をただ見つめるだけしかできなかった。
観客達からも悲鳴が聞こえてくる。
死ぬ……誰もがそう思った。
だがその瞬間、今にも襲い掛かろうとしていた雷が、ピタリと動きを止めた。
何が起こったのか、即座には誰一人理解できなかった。
全ての雷の動きが止まり、静寂が闘武場を支配していた。
そして今、セイラの目の前には、黒髪の少年が彼女を庇(かば)うようにして右手を雷に向けて立っていた。
静寂を破るように、その少年の名をミラニは呟いていた。
「……トーゴ?」
それは間違いなくトーゴその人だった。
トーゴの右手から発せられる膨大な魔力の奔流(ほんりゅう)が、『白雷(ホワイトサンダー)』を抑えていた。
「ん〜これは急がなきゃな」
トーゴはタイセーを見ながら言う。
その場で魔力を解放していき、その魔力で一度覆(おお)っているはずの『白雷(ホワイトサンダー)』をさらに強く覆っていく。
「うっしゃ、これで全部覆えたな」
確認するように周囲を観察すると、魔力でタイセーごと覆っていると判断する。
「あとは……」
そう呟くのを合図に、辺りに広がっていた『白雷(ホワイトサンダー)』が徐々に縮んでいく。
いや、よく見ると、それはタイセーの体に戻っていっているみたいだった。
タイセーは呆然としながら、自
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