第三話
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
血しぶきが舞った。
そして最後の一人は黒いローブを纏った魔術師の男。手にした杖を掲げて浪々と呪文を唱えている。掲げた杖の先から一メートル程の火球を生み出して援護している。
(先衛と後衛、そして遊撃……なかなか息の合った動きをしている。名のある冒険者かな?)
しかし、このままゴブリンたちを全滅させるわけにはいかない。彼らは大事な戦力に成り得るのだから。
(彼らには悪いけど、ちょっと死んでもらいましょうかね)
そうと決まれば木陰から素早く大木の枝に跳躍する。
(まずはサポーターから。後方支援は何かと面倒だからな)
上方から戦況を観察しながら、タイミングを見計らって飛び降りた。
厳かな声音で朗々と呪文を唱えていた魔術師の肩に着地すると同時に、頭頂部を肘で打擲する。全体重に加えて落下速度も加算され、男は潰れた蛙のような声を洩らし息絶えた。
「なっ――アッシュ!?」
「くっ、なんだ貴様は!」
突然現れた俺に警戒した冒険者たちは険しい目で睥睨してきた。俺とゴブリンの双方を視界に収められる位置に移動し剣を構える。
「いやー、失敬失敬。ちょっとそちらのゴブリンたちに用がありましてね。みすみす死なすのはこちらとしても都合が悪いので邪魔をさせてもらいました」
帽子を目深く被って口元に笑みを刻み、外向きの口調で話す俺に剣士の男が声を掛けてきた。
「貴様もゴブリン討伐の依頼を受けた冒険者か? 生憎その依頼は俺たちが先に受けたんだ。横取りするのは規則違反だぞ!」
「いえ、冒険者ではありませんよ。先程も言った通りちょっとした用事がありましてね、彼らに死んでもらっては困るのですよ。しかし、そうですか……討伐の依頼をお受けになったと。これはますます――」
「テメェ……よくもアッシュをっ!」
仲間が殺されて激昂した双剣の男が飛び出してきた。身を屈めながら地を這う蛇のように迫ってくる。
下段から迫る凶刃を首を傾けて回避した俺は滑るように音も無く背後に回り、
「――死んで貰わないといけませんねぇ」
その細い首を勢いよく捻った。コキッと小気味の良い音とともに頚椎が砕ける振動が手に伝わり、男は糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。
「シェファード!」
「いけませんよ、今は仲間の心配より自分の身の心配をしないと」
剣士の視線が俺から足元で倒れている双剣使いに移ったのを見計らい、音も無く背後に忍び寄った。
十メートル以上はある距離を一瞬で潰し、気配を悟らせることなく背後を取った俺に背筋を凍らせた。冷や汗を垂らす男の首に手を回す。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ