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大魔王からは逃げられない
第一話
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ぇ」


 見上げるほどの巨体は優に三メートルはある。


 たまにこの世界と別次元が繋がり色々な道具や魔物が流れ着くことがある。その現象は非常に稀なのだが三百年ほど前に異界のラビットホビットという魔物が流れ着いたという文献があった。ウサギのような愛らしい見た目とは裏腹に魔王級の力があって当時は大参事になったとか。


「そんなことを言っている場合ですか。私が相手をしますのでご主人様はお下がりください」


 俺を庇うように前に出るシオン。標的を俺からシオンに変えたケルベロスはメイドを睨み付けながら、今にも襲い掛かってきそうだ。シオンの肩に手を掛け引き留める。


「こんな場所で暴れたら洞窟が崩壊しちゃうよ。俺がやろう」


 グルルゥ……、と牙を剥いて低い唸り声を上げるケルベロスの前に立った俺は番犬の目を真っ直ぐ見つめた。


「俺たち、その奥に用があるのよ。通してもらえませんか、ねっ」


 魔力を解放し威圧を発するとビクッと震えたケルベロスは目に見えて怯え初めた。


 逃げようにも出口は塞がれ背後は行き止まり。高まる魔力は瞬く間にケルベロスの保有する魔力の倍に達した。


 悲鳴にも似た咆哮を上げたケルベロスは股の間に尻尾を入れるとその場で附せた。クゥン、と甘えるような声を出したその姿はもはや番犬としての面影はない。


 服従のポーズを取る番犬に近づき真ん中の頭の鼻を撫でる。


「流石はご主人様。矛を交えることなくケルベロスを制圧しましたね。ところでそのケルベロスはどうするのですか?」


「そうだねぇ……。この子がここにいるということはシオンの言う通り、まだダンジョンを踏破した者はいないと見ていいだろう。戦力は確保しなければならないから、このまま俺の配下に加えますか」


「それがよろしいかと」


「どうかな。俺に着いてくる気はあるかい?」


 ケルベロスは一声上げると、その大きな舌で私の頬を舐めた。


「おっとっと……ふふっ、これで決まりだね。さて、ではまず体を小さくすることは出来る?」


 高位のケルベロスは自身の体を小型犬のサイズまで小さくすることが出来る。『解析眼』で視たところ、この子のレベルは五三四のため恐らく可能だろう。


 コクンと頷いたケルベロスは体を縮めていき、瞬く間にチワワサイズに変化した。


 ちなみにケルベロスの頭の内の二つは魔力で形作ったものである。実態はあるが本体ではない、いわば質量を伴った魔力といったところだ。宮廷魔術師たちの話によると威嚇のようなものらしい。俺はこんなに恐ろしいんだぞと言いたいのだろう、タコが墨を吐くように。あれ、違ったっけ?


 今は警戒を解いてくれているの
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