第三幕その十三
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第三幕その十三
「何があろうともです」
「何があろうともですか」
「そうです。ですから」
そのうえで言葉を続けたのだった。
「貴女も私を愛して下さい」
「私が貴方を」
「そうです。何があっても」
ジークフリートの言葉が強いものになっていた。
「貴女さえ得られれば」
「私が」
「私というものはありません」
「どういうことですか、それは」
「素晴らしい小川が目の前にあります」
彼もまた小川を話に出してきた。
「私はそれを眺めています」
「その小川を」
「その素晴らしくうねる波を」
見ているというのである。
「私は見ています」
「その波を」
「私の姿が崩れれば燃え上がる炎を」
言葉が続けられる。
「私自身で燃え立たせそのうえで流れで冷やそうと」
「どうされるのですか?」
「小川の中に飛び込みます」
さらに言う。
「その大波が私を飲み込み」
「貴方を」
「流れの中に憧れが消えればいいのです」
言葉は恍惚としたままだった。
「ですからブリュンヒルテ」
「はい」
「起きて下さい」
言葉がかけられる。
「乙女よ、起きて」
「私が起きて」
「そして生きて笑うのです。甘い喜びの中で」
「私が貴方と共に」
「そして私のものとなって下さい」
熱い目で彼女を見ての言葉だった。
「どうか」
「はい、ジークフリート」
恍惚となって返したブリュンヒルテだった。
「私は前から貴方のものです」
「そう言って下さるのなら」
「どうだというのでしょうか」
「今私のものになって下さい」
これもジークフリートの心の言葉だった。
「是非共」
「はい、では」
そして言ったブリュンヒルテだった。
「私は永遠に貴方のものになります」
「なるであろうものに」
ジークフリートもここでまた言った。
「貴女は今なって下さい」
「私がそれに」
「私の手で貴女を捕らえ抱き締めます」
「私がなのですね」
「はい、では」
言いながらジークフリートの方に歩み寄った。
「今から」
「我が胸を激しく貴女の胸に押し付けます」
言いながらブリュンヒルテを見続けていた。
「目と目が互いに燃え上がり熱い息が弾みます」
「私を見てそれで」
「それで貴女は私のものになります」
彼は言った。
「私の不安は過去にも未来にもありません」
「そして現在にも」
「そうです。何故なら」
ブリュンヒルテにまた告げた言葉は。
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