第五話 〜討伐令〜
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ずいわ部下は上役を待たせるわ…やはり無能な人間の下にいる奴らは使えない奴らばかりだな。なぁ?』
『…申し訳ございません』
『あ?』
ドカッ
『…ッ!』
豪統様は額に酒杯が投げ付けられ膝をついた。
隣にいた部下達は心配そうに寄り添う。
私は今殺気を隠しきれているのだろうか。
なんとしても主の命は遂行せねば。
『と、父さん!』
『ん?』
私の後ろにいた豪帯様が姿を出した。
『おぉ、呼んだのに姿を見せないからてっきり逃げたと思ったが。まさか武官の後ろに隠れていたのか。はははっ』
『…ッ』
『あ?なんだその目は』
『あ、いや、ちが』
『お前はまだ自分の立場がわかってねぇようだな』
『洋班様』
『あ?』
洋班が腰をあげた所を静止させた。
不味い酒で気だるくなる程酔ったこの男を豪帯様に近づける訳にはいかない。
豪帯様は私の後ろで震えていた。
『お酒の方はその辺りでおやめになられた方がよろしいかと』
『…お前、昨日はよくも恥をかかせてくれたな』
昨日の恥…。
多分昨夜の宿屋での出来事だろう。
いつの間にか部屋から姿を消していたあたり、たかが喝の一つで部屋から逃げ出したのだから軍人、もとい男としては恥も恥だろう。
だが、その事を根に持ち、権力を傘にして威嚇してくるあたり自分が周りからどれほど滑稽に見えるのかはわかっていないようだ。
本人は気付いていないが周りの兵士達の顔色を見る限り、昨夜の噂は大分まわっているようだ。
洋班は続けた。
『お前は昨日俺に対して何をしでかしたかわかっているんだろうな?』
『はい、十分存じております』
『なら、覚悟はできているんだろうな…?』
洋班は口角を釣り上げてこちらを見ている。
すっかり自分が優位に立っている事に安心しきっているようだ。
『ほぅ…洋班様は我が首がお望みか?』
『…っ!』
だが、私はそんな餓鬼に付き合ってやる程甘くはない。
怒気を圧し殺した声で睨みを効かせてやる。
『…お、お前の首何ぞ何の価値も無いわ!』
案の定、直ぐに根をあげて顔をそらした。
こういう権力にしがみつく人間に対して引いては頭に乗るだけだ。
だからこそ始めから権力が通じない人間がいる事をわからせる必要がある。
洋班は遣る瀬無いといった表情のまま上座に座り直す。
残念だ。
もし、このガキにもう少しの気概があれば叩き斬ってやれたものを。
まぁ、無いとわかっての挑発ではあったが。
だが苦し紛れとはいえ、我が首級に価値が無いとぬかした事、憶えておくぞ。
『…くそっ』
悪態をつく洋班の傍らで、さっきまで膝を付いていた豪統様と目が合う。
すると、気付かれないように小さく頭を下げられる。
…いえ、豪統様の命
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