第五話 〜討伐令〜
[2/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
彼は人一倍我は強いがそれと同じくらい自分のした事への罪悪感も強い。
『…僕があいつに逆らわなければこんな事に…っ』
気付いた時には豪帯様の小さな体を抱きしめていた。
…謝るのは私の方だ。
何もしてやれない。
ここで我が命を張った所で所詮できる事は限られている。
人一人くらいなら容易く殺める事もできる。
だが、その父や州となると話は別だ。
兵を挙げれば抗う事は可能だ。
だが、それは同時に私の周りの全てを巻き込むという事。
何より我が主、豪統様がそれを望んでおられない。
昨日日が沈み掛けた頃、私の部屋に豪帯様が来た時は驚いた。
戸が騒がしく叩かれるものだから開けてみれば、顔中を涙で濡らした豪帯様が私にしがみつき必死に謝罪の言葉を言いながら泣き続けられるのだ。
理由を何とか聞き出した時は血の気が引いた。
まさかと思った。
駆け付けた時には既に豪統様は全身に傷をおいながら床に伏しておられた。
その豪統様の頭に足を乗せて罵り続ける洋班を見た時は私は冷静さを失ってしまった。
一喝の元叩き斬ってしまおうと思ったが伏せていた主がそれに気付き静止されてしまった。
そして主に駆け寄った時言われてしまった。
"決して早まるな"と。
私は一言命令して下されば例え州であろうが国であろうが豪統様の為に命を捧げる覚悟はある。
だが、その豪統様に私は早まるなと言われてしまった。
私が豪統様の意向を無視する事は決してあってはならない。
そう、あってはならないのだ。
そしてもう一つ言われた。
"息子を頼む"と。
『…豪帯様、大丈夫です。私がついております』
『…うぅ、ひっく、ごめんなさい…うぅ…ッ』
私に抱かれながら体を震わせ泣くこの少年に対して私がしてやれる事は"大丈夫"と根拠の無い言葉を掛けてあげるだけ。
なんて無力なんだ。
しかし、いつまでも泣かせたままではいけない。
今私達二人はあの洋班に呼び出しを受けている身。
もし少しでも待たせてしまったらあのガキの事だ。
きっと権力で更なる災いを招くだろう。
それだけは避けなければいけない。
主が為、そして豪帯様が為に。
『…豪帯様、そろそろ』
『…』
豪帯様が無言で頷かれる。
ふと見えた目には力が篭っていなかった。
…いったいどうしてこうなってしまったのか。
『おう、随分と待たせてくれるじゃねえか』
政庁には既に洋班と豪統様がおられた。
だが、本来豪統様がいるべきはずの上座には洋班が座っていた。
右手には酒杯が握られている。
そしてその隣に侍らずように部下と共に豪統様は並べられていた。
顔中の痣は青くなっており昨夜部屋にお連れした時よりもさらに痛々しく見えた。
自然と拳に力が入る。
『酒はま
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ