15 「はじまりの足踏み」
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子のためにもね」
「ああ……ありがとう…!」
揺れる荷車の上一週間同じ釜の飯を食う会話を交わし(主にどんな生活を送っているだとか、どうやったらそんな戦い方ができるのかとか)、ユクモ村に帰る頃には初め殴りあったのが嘘のように友人と言い合えるような仲になった。リーゼやエリザとも少し違う、ナギにとって初めてといっていい男友達だ。
「このっ……馬鹿者!」
ユクモ村に生還したカエンヌが第一にもらったものは、目にうっすら涙を溜めたオディルの平手打ちだった。周りがニヤニヤする中怒鳴りつけられ怪我で済んだことを喜ばれ、最終的になんだか色々ぐちゃぐちゃになりながら抱きつかれたカエンヌは、青くなったり赤くなったりと忙しない。
「ありがとう、ナギ君。本当にありがとう」
「ありがとうございました!」
「まあ一応こんなやつでもあたしの先輩なわけだし…お礼言っとくわ。ありがと」
村人達からも「よかったよかった」「ありがとうよ」と背を叩かれ、こそばゆい。人助けもなかなか良いものだと、心地よい疲れを感じながら思った。
「ほんとうにありがとうございました、ナギさま。本当に…」
「いくらでも感謝するがいいニャ。ニャアも讃えるニャ」
「ええ。感謝しますわ、ルイーズさま」
「にゃふっ♪」
「コラ。…また何かあったら呼んでください。……ん?」
竜車を貸してもらい、門へと歩きだそうとしたナギは不意に足を止めた。後ろから不思議そうに見やる視線を感じつつしゃがみこみ、石畳に耳を付ける。
「な、なにやってんのよ」
「ナギさん……?」
「……来る」
「え?」
その時だった。
カーンカーンカンカン! カーンカーンカンカン!
物見やぐらから緊急避難の鐘がなった。何事かと皆上を見上げる。青ざめた物見が力の限り叫んだ。
「何か…黒山の何かが渓流方面から向かってくるぞ! 逃げろ!! あれは……ファンゴの大群だ!!!」
「10や20なんて数じゃない!! ドスも混じってる! 50頭はいるよ!!」
「村が根こそぎ踏み潰される!! 逃げろ!!!」
静寂は一瞬だった。
キャアアアア!!!!
うわああああ!!!!
観光客は我先に逃げ出し、場は混沌と化す。村長と補佐、ハンター4名とナギは物見の話を聞くべくやぐらに隣接する集会浴場へと向かった。
ファンゴが来るまで推定であと10分と少し。数は憶測50頭うち3頭のドスファンゴを確認。ファンゴはまっしぐらに村へと駆けてきているが、それが村を目指しているのかたまたま村が延長線上にあるだけか、それは不明。それだけ聞くと、ナギ達は物見にも避難するよう伝えた。「すまねえ」とひとこと謝ると、物見の夫婦は急ぎ足で仕度をすませて部屋を出ていった。
集会浴場奥の会議室
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