15 「はじまりの足踏み」
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っと息を吸い込んだ。炸裂ブレスだ、とカエンヌが思う前に、地を蹴ったナギが宙を飛ぶ。地面が爆発するが、空中にいる彼にはまったくダメージはない。リオレイアの頭に着地と共に太刀を先ほどルイーズが作った傷に突き刺した。
ズブ...ズズズ......ズシュッ
ナギの全体重がかかったそれはみるみる埋まってゆき、同時に赤い血が噴水の如く吹き出した。悲鳴を上げる間もなく銀火竜の太刀は鍔までその身を雌火竜に沈め、それは明らかに口内まで貫通していた。
空いた口からだらだらと血を流し、目は痛みにうつろになりつつあるリオレイアも、だが陸の女王としての意地を見せた。
果敢にも片翼のみで飛ぼうとし、バランスを取れないゆえに通常時よりひどく揺れ動く頭により頭上にいるナギを無理やり振り落とす。猫のように着地したナギは尻尾回転攻撃を地に伏せてやり過ごした。踏み込み斬りでもう片方の翼膜も引き裂く。竜の翼膜を一撃で破る太刀の切れ味とそれを十分に活かすナギの腕が合わさり、残ったリオレイアの左翼も痛々しく膜がべろんとさがった。これでは一瞬宙に浮くのも厳しい。
「飛べない竜は」
遠目にもわかる、リオレイアは瀕死だった。血を流しすぎていた。
ルイーズによって更にちまちまと削られていた右足を引きずってエリア脱出を図るも、ナギがそれを許すはずもなく。
「ただのトカゲだよ」
防具をつけないゆえに生まれる瞬発力と速さであっという間にレイアに近づき、再びその足に向かって太刀を振り抜く。今度は足がちぎれ飛んだ。
哀れな陸の女王は、皮肉にもその陸に伏せ、立ち上がることもままならない。ただ喘いでもがくだけだ。強靭な竜の生命力が、今はリオレイアを苦しめていた。
流れる川の水が女王の血に染まり、赤く大地を染めていく。
ナギはゆっくりリオレイアの眼前に回り込むと、再び太刀を鞘に戻し、腰を落とした。チャキ、と金属音。ふっとナギの体が脱力した。
ザンッ
最後に躯から切り離されたのは、頭であった。
「お前の負けだ」
物言わぬ女王の亡骸はところどころパーツの足りないいびつな屍で、竜のそんな死体などカエンヌは見たこともない。
あまりに圧倒的だった。
まともな攻撃は一撃も浴びず、それどころか片翼と片足、首を切り落とす。飛竜相手にそれを成し遂げた上で戦闘時間合計十数分。
これは人間の成せる業か。世の上位ハンターや、G級ハンターはこれくらいできるというのか。
ナギは手を伸ばして開いたままのレイアの虚ろな瞳を閉じると滝に向かい、帰り血を浴びた顔を洗った。羽織は血濡れでずっしり重く、とりあえず洗ったがどちらにしろ血生臭すぎてもう着ないだろう。
ため息をつきつつカエンヌのもとへ行ったナギを迎えたのは、恐怖の眼。
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