第三幕その十一
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第三幕その十一
「もう私も覆ってはくれません」
「もうですか」
「必要のないものになりました」
「それもですか」
「そして鎧も」
それもだというのである。
「私には必要のなくなったものであります」
「それも必要が」
「何故なら」
ブリュンヒルテはここで言った。
「貴方の勇気があるからです」
「私の勇気が」
「そうです。貴方は剣だけで来た」
このことを言うのだった。
「その剣だけで、です」
「このノートゥングだけで」
「そうです。それこそが何よりの証」
ブリュンヒルテは言った。
「貴方がここに来るのに炎を越えましたね」
「はい」
そのことも答えるジークフリートだった。
「それもです」
「炎を恐れませんでしたね」
「ええ、それは」
全く恐れていなかったのだ。これもまた事実である。
「その通りです」
「ええ、それは」
「私は炎を越えました」
「それが勇気なのです」
「それこそがですか」
「そうです」
まさにそれだというのだった。
「それこそがです。貴方の勇気なのです」
「それが私の勇気だと」
「何もかもを恐れることなくそして今恐れを知った」
「それが勇気だと」
「恐れを知ってこその勇気なのです」
ブリュンヒルテが言うにはそうなのである。
「それがなくてはです」
「勇気とはならない」
「貴方は恐れを知り」
「そして」
「それを克服することができます」
それができるというのだった。
「貴方ならば」
「私にそれができると」
「できます。貴方だからです」
それを確信しているのだった。
「それもまた」
「そうなのですか」
「そしてです」
ブリュンヒルテはそのうえで話を変えてきた。
「貴方は別の炎も感じておられますね」
「はい、確かに」
それはまさにその通りだった。
「私は今心が燃え盛っています」
「そうですね。それは私も感じています」
「そうなのですか。炎を」
「貴方から感じています」
「あの周りで燃えていた炎が消えました」
それは消えたというのだ。
「ですがそれでもです」
「そうですね。その炎が私の中に」
「貴方の胸の中に」
「そして私は今願っています」
そうしているというのだった。
「この炎を消すことを」
「炎をですね」
「そうです。炎をです」
また言う彼だった。
「消す方法は知っているでしょうか」
「はい、それは私が知っています」
微笑んで答えたブリュンヒルテだった。
「私だからこそ」
「貴女だからですか」
「そうです。ですから」
微笑んで言うブリュンヒルテだった。
「私を受け入れて下さいますか」
「私が貴女を」
「そうです。できるでしょうか」
「はい、できます」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ