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ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
ALO編
episode5 旅路、猫妖精領2
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く売れるな。いや、火妖精(サラマンダー)の方が高く買ってくれるかな?」
 「っ!!?」

 アリシャの顔が、さっと歪んだ。

 と同時に左手が素早く動く。表示される無数のウインドウが光の六角柱を為す、領主専用の巨大なメニュー画面だ。呼び出されるのは、領主の示す敵を容赦なく切り裂くガーディアンだろう。だが、甘い。

 「おおっと、いいのか? もうスクリーンショットは取ってあるぜ? 俺を領地に()()()()させたらマズいんじゃないか?」
 「っ、っ……ケットシー領の出口で検問をはって、」
 「俺はここでセーブしてない。死んだら別の領地だぜ?」
 「っ……!」

 見ていて痛々しいくらいに、アリシャの顔が悔しげに顰められる。
 彼女の明るい笑顔を知る俺には、目を逸らしたくなるくらいに痛々しい表情。

 なのに。
 俺はそれを見たくないと思っているのに。

 ―――ソンナニ俺ヲ、信ジルナヨ……

 俺の口は止まらない。
 自分の顔に、張り付いたような厭らしい笑みが浮かぶのを、他人ごとのように感じる。

 「アンタは、甘すぎるんだよ。それとも俺を麻痺させて足止めするかい? 俺とその鉤爪(クロー)で戦ってみるかい? まあ、無理だろうがな。アンタが一番良く分かってるはずだぜ」
 「っ、」
 「悔むんだな。簡単に俺を信じた、自分の迂闊さを。」
 「……っ、でも。っ……!」

 俯いて、唇が噛み締められる。耳が後悔に……或いは、悲しみにぺたんと伏せられる。
 それ以上何も言えずに、今にも泣き出しそうな彼女。


 重々しい、沈黙。
 その沈黙の中、彼女の瞳が、潤み。

 そして、俺の中のなにかが、……完全に、ではないけれど……ゆっくりと霞んでいく。
 戻ってくる、罪悪感と諦観と、言いようのないバカバカしさ。

 それらをたっぷりブレンドして。

 「……十分、反省したな?」

 大きなため息とともに、一声。
 その声に、涙が流れかけた彼女の瞳が、弾かれた様に真直ぐに俺を見た。


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