第百二十四話 評判その十二
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「では独眼龍が少しでもおかしな素振りを見せれば」
「殿、その際はお任せ下さい」
「我等がおります故」
毛利と服部も言う。
「例えあの者が何をしようとも」
「殿に指一本触れさせませぬ」
「何、独眼龍といえどです」
佐々は毛利達以上に言葉が強い。
「わし等がおります」
「出来ればこの様な無茶はして欲しくありませんな」
柴田の言葉だ。
「全く殿は」
「やれやれ、また権六の説教か」
「説教ではありませぬ」
それではないというのだ。
「それがしは当たり前のことを申し上げているだけです」
「そこでそう言うのがじゃ」
信長は厳しい顔の柴田に苦笑いで言う。
「小言じゃ」
「そう思われるなら結構、わしもです」
「わしと織田家の為にか
「左様です」
「では存分に言うがいい、わしもじゃ」
信長もだというのだ。
「聞くわ」
「それは何よりです」
「しかしじゃ」
それもでだと言う信長だった。
「御主と爺といい、五月蝿いのが多いんわ」
「それは殿を想うからこそです」
それ故にだというのだ。
「ですから」
「それでだというのじゃな」
「そのこともご承知下さい」
「やれやれじゃあ」
柴田のその強い言葉には信長も呆れるしかない、そうした話をしたうえで。
信長は茶を飲む、そこで今度は小寺に言った。
「それでじゃが」
「はい、何でしょうか」
「まずは皆の者も飲め」
その茶をだというのだ。
「よいな、茶をな」
「有難きお言葉、それでは」
「我等も」
「それではな」
「はい」
頷いてそうしてだった。
信長は自ら茶を淹れた、そのうえで家臣達にそのうえで振る舞いそうして自らも飲みそのうえで共に飲む家臣達に問うた。
「どうじゃ」
「はい、よいですな」
「目が冴えます」
「そうじゃな、茶はよい」
「みちのくにも茶はあるでしょうか」
ここでこう言ったのは佐々だった。
「あの地にも」
「どうであろうな、おそらくだが」
「おそらくでありますか」
「あるであろうな」
信長はこう答えた。
「あの地にもな。それに伊達は風流が好きという」
「そうなのですか」
「色々と書を読みそして己で料理もするという」
「何と、自らですか」
ここで佐々はこの者の名を出した。
「それでは細川殿と同じですな」
「あの者とじゃな」
「はい、あの方と」
「あの者も料理をする」
そしてそれにも才を見せているのだ。細川は幕臣、いや織田家きっての風流人としても知られているのだ。
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