第百二十四話 評判その八
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「ですから」
「織田とはやり合うつもりはない」
元就は言い切った。
「大きい、しかも織田信長はわし以上の者じゃ」
「何と、殿以上の御仁ですか」
「そこまで仰いますか」
「うむ、間違いない」
こう家臣達に言うのだった。
「あの者はな」
「瞬く間にあそこまで大きくなり香木も拝領した」
「しかも見事な政もしている」
「その織田信長はですか」
「殿以上だと」
「わしは老い過ぎたか」
その歳に恨みも感じていた、どうしようもないことだが。
「あの者は若い」
「それ故にですか」
「織田信長は」
「対することは出来ても勝つのはわし一人では無理じゃ」
こう言うのだった。
「だからじゃ」
そして息子達と家臣達を見て言うのである。
「頼むぞ」
「無論です、では」
「我々もまた」
息子達も家臣達も元就のその言葉に頷いて返す、毛利家もこれからのことを見据えてそのうえで動こうとしていた。
どの家も織田家を見ていた、だが信長は彼等のその視線に気付いていたが普段と変わらない調子で家臣達に言っていた。
「銭が多いに越したことはないのう」
「しかし当家は年貢も税も軽いですな」
藤堂が信長のその言葉に応えて言う。
「どちらも」
「うむ、税を重くしてもそれで実入りがよくなるかといえばな」
「違いますか」
「だからじゃ。税は軽くてよい」
信長は藤堂にこう返す。
「それよりも田畑や町を拓き栄えさせた方がよい」
「確かに、税は軽くして」
「税を重くすれば民はそれだけ難儀する」
信長にはこの考えもあった。
「だからじゃ」
「税は軽くして田畑と町をですか」
「それがわしのやり方じゃ。どうじゃ」
「政でありますな」
これが藤堂の見立てだった。
「まさに」
「政と申すか」
「税を上げることなぞ誰でも出来ます」
それは何ともないというのだ。
「これ程楽なものはあrませぬ」
「実入りもよくなるな」
「しかし民はその分苦しみ」
「そうしてじゃな」
「民は疲れ結果として国も疲れてしまいます」
民は即ち国だ、それならばそうなるのも当然だった。
「それでは何もなりません」
「そういうことじゃ。だからじゃ」
「税は軽くし」
「田畑や町をよくすればよいのじゃ」
「堤や道、橋も整え」
「そうすれば国はよくなるのじゃ」
信長は笑って言う、その信長にだ。
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