第三幕その五
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第三幕その五
「そのミーメか」
「ミーメではない」
それは否定するのだった。
「あいつはこの剣を作れなかった」
「そうだったのか」
「それで自分で作った」
「御前がか」
「そうだ、僕がだ」
まさに彼がだというのだった。
「僕が作った。自分でだ」
「御前が造り上げたその剣の破片はだ」
「まだ問うのか」
「そうだ、誰が作った」
やはりここでも問うのだった。
「その剣のもとは誰が作ったのだ」
「そんなことを知るものか」
流石にそこまでは答えられないジークフリートだった。
「僕が知っているのはただ一つだ」
「一つか」
「そうだ。破片では役に立たないというころだ」
それだというのである。
「それで僕が作ったんだ」
「それはその通りだ」
ジークフリートの言葉に頷く彼だった。
「それはな」
「そうか」
「ふむ」
ここで、だった。さすらい人は彼を見て笑ってきたのだった。
そうして言おうとするがジークフリートがまた言ってきたのだった。
「何故笑うんだ」
「笑う理由か」
「何故だ。何度も話を問うてきて」
実はそれが不満の彼だった。
「もういいだろう。道を教えてくれるか」
「道をか」
「そうだ。教えてくれるのかどうなんだ」
あらためて彼に問うのだった。
「そうじゃないなら黙っていてくれ」
「そう焦るな、若者よ」
こう言いながら彼に返す。
「老人は敬うものだぞ」
「それも悪くはないが」
「ならそうするのだ」
「僕は今まで一人だった」
ミーメのことは数には入れていなかった。
「邪魔な年寄りを知っているだけだ」
「それがミーメだというのだな」
「そうだ。そいつはもう倒した」
そうしたというのだ。
「次は御前になるのか」
「私だというのか」
「そうだ。若し御前が僕を頑固に引き留めるなら」
剣に手をかけての言葉である。
「あいつと同じことになるぞ。しかし」
「しかし?」
「御前の帽子は大きいな」
このことにふと気付いたのだ。
「何故なんだ、それは」
「風に逆らって歩く為だ」
だからだというのだった。
「それがさすらい人のやり方だ」
「そして御前は」
ジークフリートはまたあることに気付いたのだった。
「片目だな」
「片目か」
「そうだ、片目だな」
あらためてそのことを言うのだった。
「そいつはきっと御前に邪魔をされた奴がえぐり取ったのだな」
「それは違う」
「違うというのか」
「私はかつて片目を自ら捨てたのだ」
そうしたというのである。
「知識を得る為にだ」
「その為にか」
「そうだ。その為にだ」
さすらい人は言った。
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