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レンズ越しのセイレーン
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Report6-4 ヘルメス/アクトレス
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 ユティがエルを呼ぶ。エルは上機嫌でユティの横へ戻ってきた。ユティはエルの肩を抱き寄せ、アルヴィンを、ユルゲンスを、澄んだ蒼眸で射抜いた。

「パイを焼いてるのは、だれ?」
「ルドガー君とジュードだろう」
「売り子をしてるのは?」
「君とエル」
「ビラ撒きをしてくれたのは?」
「エリーゼとローエンさんだが」
「ユティ。そろそろ何の謎かけかぐらい教えてくんね?」
「分からない?」

 ユティは首を傾げた。分かるか、とアルヴィンは投げやりに答えた。


「今日ここにいる人たち、リーゼ・マクシア人とエレンピオス人、両方」


「「………………………あ!!」」

 リーゼ・マクシア人とエレンピオス人が一緒に商売するのは無理? とんでもない! 小規模とはいえ、まさにこうして両国民による商いが成立している。

「ユティ、エルたちだけじゃないでしょ」
「そうだっけ」
「だって、ここの果物って、アルヴィンと羽根のおじさんが売ってるヤツじゃん!」
「そうだった。ふたりも、両方、ね」
「よく言えましたっ」
「エルほどじゃない。一番大事なのに、言い忘れた。ありがと、エル」

 ユティがエルの頭をなでる。セットした髪を崩さないためか、とてもていねいな手つきだ。

「エルが言ったけど、これ、エレンピオスの人たちに、リーゼ・マクシアのフルーツを味わってもらうためのイベント。ワタシたち、知識不足。卸売りのアナタたちが、この場で一番、宣伝に向いてる。明日も、あさっても、3日後も、4日後も」

 アルヴィンはユルゲンスの顔色を窺った。困惑が濃い。きっとアルヴィンも似たり寄ったり顔色なのだろうが。

 にこ。ユティはとても珍しい満面の笑みを浮かべ、エルと共に宣伝に戻っていった。

「……どういう意味だったんだ」
「明日から4日間はイベントやるから、その気になったら売り込みに来いってこと。もっと言うと、踏ん切りつかねえなら3日は悩む猶予があるぞってとこか」

 ユルゲンスも気づいたようで、アルヴィンを見返してきた。アルヴィンはクセで顔を逸らして頭を掻いた。

(背中押すにも限度があるだろうが。こんだけお膳立てされちゃもう逃げるなんてできねえよ)

 覚悟を決めてふり返る。

「あのさ、ユルゲンス…!」
「アルヴィン、俺は…!」

 重なった。

 ――どうやら長い話になりそうだ。




「うそ、つき」


 ユティは人ごみの空白地帯で立ち止まり、自分自身に向けて小さく呟いた。
 メガネを外し、タイトなメイド服を着て、髪をストレートにして、なめらかにしゃべって、愛想笑いを浮かべて、嘘泣きして。今日のユティはウソだらけだ。
 だけど、何よりのウソは。


「仲良くして
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