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バーガーに手を伸ばして食べ始める。
 このお嬢さんに付き合うにはちょっとばかり多めのカロリーが要りそうだ。

 秋晴に倣い、恐る恐るながらも自分の分のハンバーガーを食べ始めたルイズは、初めて食べるハンバーガーの言葉の前半と後半がチグハグになった。
 向こうの世界の文化圏は中世レベルなので、ハンバーガーはないのだろう。
 似たような物ならあるかもしれないが、あまり貴族向けとは言い難い気がする。
 四苦八苦しながらハンバーガーを食べる彼女を微笑ましく思ってしまうのは仕方がないだろう。

「それで、満足したかな?」
「……」

 何とか食べ終わったところで話を振る。
 流れでここまで付き合ってしまったが、秋晴の立場を考えれば褒められた物ではない。
 余計どころか責められても文句は言えないし、さっきからどうにも嫌な予感がしている。
 このパターンに覚えがあるのだ。

「…ねえ?」

 ルイズは答えでは無く、疑問でかえしてきた。
 それを聞いて予想が大当たりしたようだと内心で溜息をつく。

「魔法って必要なのかな…」

 ここに、彼女の言葉を理解出来る物が他にいれば目を向いた事だろう。
 赤髪褐色肌の女性がいれば、ルイズの正気を疑ったかもしれない。
 それほどに、ルイズの言った事は意外であり、最も彼女からは遠藤い言葉のはずだった。
 ルイズは…ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと言う少女はまともに魔法が使えない…と自分も周りも思っている。
 そんな彼女だからこそ、人一倍の努力を重ね、貴族であろうとしたルイズがメイジの存在意義である魔法を否定する事を口にする事は本来あり得ない事のはずだが…。

…案の定価値観がぐらついているな…。

 世界が違えば価値観も常識も違う。
 そのギャップに打ちのめされるのが異世界訪問の第一の試練と言えるだろう。
 原作に置いて、平賀才人がルイズ達の世界になじむまで時間がかかったように…いや、ルイズの場合はもう少し事情が複雑かもしれない。
 魔法が使えない今の彼女はどちらかと言えばこちら側の世界の人間に近いだろう。
その理由が、彼女の系統が普通ではないからと言う事を秋晴は知っている…尤も、それを口にすることはしない。
例え記憶の改竄が出来るとしても、それは一人の少年との出会いの後、彼と駆け抜ける物語の中でするべきこと…脇役で黒子である自分が、結果が変わらないからと言って口にするべきことではないとおもうのだ。
 ともあれ、彼女が魔法を使えない事で悩み、色々な壁にぶち当たって来た事は原作でも明らかだ。
 それが、魔法が無くても発展した世界に放り込まれれば価値観の一つや二つ、揺れても仕方がないだろう。

「別に、化学はそこまで万能じゃない」


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