第三話
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を再び悪寒が走り去っていった。
クルト大尉は予想できないことを考えることが多い。自分を犠牲にするということは、それと同等の価値がある何かがあるということ。悠斗が考えていた同等の価値があるものは、誰かの死亡だった。
悠斗の脳裏には、復習の念を持ったある少年の顔が浮かび上がっていた。
「まさか……」
「まあ、何を考えているかまではわかりませんがねぇ」
「ふざけんな! あんたなら何を考えてるかなんて、簡単にわかることだろ!」
「さあねぇ?」
牧野はわざとらしくそう言っていた。
「まあ、それはさておき……あなたは自身の心配をしたらどうですかぁ?」
「なにを……!!」
言い返そうとした悠斗の耳に、かすかな機械音が聞こえてきた。
(まだいるのか!?)
身の危険を察知した悠斗は、雛の手を掴むなり壁に向けて走り始めた。
「どっどうかしたんですか!?」
「あいつは一体だけじゃない! まだ数体はこの部屋の中にいる!」
「えっ!? でも何も見えませんよ!?」
「さっきのやつも半透明だったから、遠くからだと見分けがつかない! とにかく、壁を背にしていくしかない!」
壁までたどり着くと、悠斗は背中を壁に向けてあたりを見わたした。
だが、距離が遠いからか全くといって敵影は見えていなかった。徐々に悠斗の心が焦りで埋め尽くされていく。
「くそっ……どこにいるんだ……」
「悠斗さん! 上!」
「なっ!?」
悠斗が上を向くと、半透明の物体が壁をつたってこっちに向かってくるのが見えた。
悠斗は雛をかばうようにしながらその場を離れる。その数秒後、二人がいた場所に小さな亀裂が入っていた。
「くそっ!」
悠斗は、とりあえずすきだらけになった物体に銃撃を加える。物体はそのまま部品を飛び散らせながら倒れていった。
(忍者ベースだから壁も渡ってくるわけか……これじゃあどこにいても危険すぎる!)
もはや悠斗達に逃げ場などなかった。
試作一号機は忍者をベースにしている。壁を走ることもできれば、身体能力の高さを生かして上下左右からの攻撃ができる。おまけにスピードも速い。
あきらかな劣勢だった。
「さあさあ! もっと戦ってくださいなぁ!!」
「ぐっ……」
なんとかして思考を働かせるが、何も思いつかず時間だけが流れてしまう。このままでは二人ともやられてしまう。悠斗の脳裏にはそんな状況が見え始めていた。
「……悠斗さん。私もいるんですよ?」
「えっ……」
あせりの色を隠しきれない悠斗に、雛はやさしく声をかけた。
「私に任せてください
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