第ニ話「僕はトラヴィス・ファン・オーヴァン」
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ともだと思うわよ?」
「まあ、レオンの言う通りトラの食べ方は……なんというか、二歳の食べ方とは思えないけどな。トラ、父様のようにやってみなさい」
苦笑する父様は優雅とも言える手つきでナイフとフォークを使い分け、ステーキを切り分ける。
まるで、こうするんだぞというように一瞥する父様に大きく頷いた俺は、シャキーンと両手に装備した金属を掲げた。
「えい」
ぶすっ。
左手のフォークで獲物(肉)を突き刺す。もちろん力加減は絶妙でソースを飛ばすなんてヘマはしない。
「やあ!」
天高く掲げた右手を振り下ろす。ナイフは一筋の銀の軌跡を描き、肉もろとも皿とテーブルまで切り裂いてしまった。
溶けたバターに刃をいれるような滑らかさで切り裂いたテーブルに一瞬場が凍りつく。
「しっぱいしちゃった……」
失敗どころではないが、取りあえずシュンとする。こうすると周囲から受けるダメージが少ないのだ。
「し、失敗どころの話じゃないだろっ! なんなんだそれはっ!」
ガタッと音を立てて席を立ち、唾を飛ばしながら激昂するシアン。血圧上がんぞ?
レオン兄は頬に一筋の汗を垂らしながら苦笑いした。
「うーん、トラは力加減を覚えなくっちゃダメだな……」
「そうねー、これじゃあお肉さんを上手に食べられないわねぇ」
「いや、そういう次元じゃないんだが……」
同じく引き攣った笑みを浮かべる父様と、「困ったわー」と頬に手を当てて然程困ってなさそうに言う母様。
「そもそもなんで二歳のトラヴィスがこんな怪力なんだ!?」
シアンのある意味最もな意見に、愛する両親は。
「もうトラヴィスだからとしか言いようがないな」
「そんなの、トラちゃんが特別だからに決まってるわ! なんていったって神様に愛されてる子だもの!」
もう堪らない、とばかりにギューッと抱きしめてくる母親。
豊満な胸の柔らかさと何とも言えない良い香りに包まれ、性欲よりも安心感を覚えるのは俺の身体がお子様だからか、それともこの人の子供だからか。
背後に控えたメイドたちはもう慣れましたとでもいうように全く顔色を変えず、割れた食器や汚れたテーブルを処理していく。
――拝啓、天国のお父様。今日も我が家は賑やかな食卓に包まれてます。そしてブタが煩いです。
† † †
この世界はアルカディアと呼ばれる。それが惑星を意味するのか世界を意味するのは分からないけど、固有
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