第ニ話「僕はトラヴィス・ファン・オーヴァン」
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トラの奴どこに行ったんだ?」
「なんでこの僕があんなやつを探さないといけないんだ……!」
「まあまあ兄さん、トラを早く見つけてみんなで夕食をいただきましょう。今日は兄上の好物のサンクベルの塩焼きだそうですよ」
愚図るシアンを宥めすかしながらレオン兄が眼下を通り過ぎた。
――よし、このままやり過ごそう……。
ひっそりと息を潜めて二人が視界から消えるのを待っていると、背中に声が掛かった。
「トラヴィス様ッ!? またそんなところに……! 危ないですよ!」
「トラ?」
マリィの悲鳴にも似た声に兄たちが振り返る。
「……あ、みつかっちゃった」
身を伏せていた俺は大人しくいそいそとシャンデリアから降りた。
† † †
「まったく、トラには困ったものだな。怪我をしないか父様は心配だぞ?」
「大丈夫ですよアナタ。トラちゃんは賢くて強いですもの。怪我しないように自分で気を付けますよ」
「いやいや、トラはまだ二歳なんだ。目を離した隙にどこか危ない所に行ってしまっては叶わん。それでなくとも活発的な子なんだから」
「あらあら、アナタってば心配屋さんね」
うふふと品のある笑顔をこぼす母様の隣で俺はメイドの差し出す料理を片っ端から平らげていた。
二センチはある厚切り肉のステーキにドシュッとフォークを突き刺し、あーんと大口を開けてかぶりつく。
豪快でとても品のあるとは言えない食べ方をする俺をシアンが眉を顰めながら眺めていた。
「おいトラヴィス、その品のない食べ方は止めろ。貴族の品質を問われるぞ」
「おことばですが兄さま、しょくじはおいしく食べるのがいちばんですよ?」
「だとしてもだ。お前の食べ方はあまりに見れるものじゃない」
それはお前だろう。気付いてないみたいけど、さっきからポロポロ食べかす落としてんぞ。
「シアン兄さんのいうことはもっともだな。トラの言うことも一理あるけど、その食べ方はいささか豪快すぎるぞ?」
「うー……レオン兄さまが言うならそうします」
「なんでレオンの言うことは聞いてボクの言うことは聞かないんだ!」
うっせ、いちいち喚くなメタボ。
ソースをつけた俺の口元をメイドが恭しく拭う。レオン兄様に言われては仕方がないな。
少し肩を落とした俺の耳に母様の優しい声が耳打った。
「まあまあ二人とも、食事くらい自由に食べても良いじゃない。トラちゃんの言うこと、母様はもっ
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