第ニ話「僕はトラヴィス・ファン・オーヴァン」
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で屋敷の中を思いっきり走り回れる程やんちゃなのだ。あまりに常軌を逸した成長っぷりに普通は疎遠になるか、最悪捨てられてもおかしくない。
人間とはどこまでも排他的な生き物で、自分たちとは『違う』という事実をなによりも受け止めがたい種族なのだから。神として、元人間として俺は人間という性質を理解している。
そんな俺を気味悪がずに他の子供たちと同等の愛を注いで育ててくれているんだ。
正直転生させられてジジイに恨み言の百や二百こぼしたが、今ではこの二人の元に生まれさせてくれたことを感謝している。
「トラヴィス様ー!」
ちなみにこの家には両親と兄二人の他にメイドが二十人ほど、執事が十人ほどいる。さきほどから俺の名前を呼びながら探し回っているのはメイドの一人だ。
ちょくちょく部屋を抜け出しては探索という目的のもと屋敷を動き回っている俺だ。俺の姿が見られなかった途端探し始めたのだろう。まだ後十分は逃げ回って見せる!
「トラー、どこにいるんだー? 早く出てきなさーい」
「おいトラヴィス! 弟のくせに隠れるなんて生意気だぞ!」
――! どうやら上二人も探し始めたようだ。
オーヴァン家長男のシアン・ファン・オーヴァンは今年で十二歳になる。
実は俺、兄弟の中で一番こいつが嫌いだ。
典型的な貴族気質というべきか、ジャイアニズムというべきか。ありもしない見栄を張り、元四大貴族というありし日の名誉をいつも口にしている。しかも自分が大貴族だと勘違いしているのか尊大な態度をとっているのだ。十歳にしてメタボのくせに、なにかと両親に気に入られている俺を邪険に扱う嫌な奴である。
対して俺の八つ上のレオン・ファン・オーヴァン、十歳は礼儀正しく笑顔が爽やかな兄だ。美男子という言葉がぴったりくる容姿をしており、将来モテモテになることは間違いないだろう。シアンとは違い弟である俺にも優しい良い兄である。母譲りの金髪が目にまぶしい。
そして俺は爺様譲りの銀髪だ。まだ二歳だから身体は小さいけれど、身体能力は二歳のソレではない。精神年齢なんか言わずもがなだし、魔力も測定器を振り切る程の量を有している。
賢い賢いトラヴィスくんは母様の言葉を借りると「神様に愛されている子」らしい。神本人ですが何か?
「トラヴィス様ー! もうご夕食のお時間ですよー!」
――やばっ、メイドのマリィさんが来る!
とある一室に隠れていた俺は素早く廊下に出る。足音が近づいてくるのを確認すると窓枠に足を掛けて大きくジャンプ!
素晴らしい跳躍力を発揮し、天井にぶら下がるシャンデリアの上に飛び乗った。
「まったく、
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