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渦巻く滄海 紅き空 【上】
五十三 一尾VS九尾
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何が出来るのだろう。


サクラは遠目に交戦中のナルを見た。アカデミー時代、成績優秀だった彼女はナルをどこかしら見下していた。ドジばかりして先生に怒られて。いつもドベだったナルを内心馬鹿にしていたのだ。

その彼女が今、あの砂瀑の我愛羅と渡り合っている。なぜか小さい蛙を抱えながら、それでも負けじと闘っているのだ。失敗したようだが、何時の間にか【口寄せの術】まで憶えているナルにサクラは戦慄した。
同じ女でありながら急成長したナルに嫉妬と羨望、そして劣等感を抱く。


そして感じた。自分は無力だと。



項垂れるサクラを複雑な表情で香燐は見下ろした。彼女はナルトから頼まれ、君麻呂と共に我愛羅を尾行していたのである。
もっとも君麻呂は我愛羅を追うサスケが目的だったので、香燐の役目は以前特定した我愛羅のチャクラを感知する事であった。

君麻呂がナルトに頼まれていた事柄は『波風ナルが来るまでの、うちはサスケの生存及び呪印の抑制。そして大蛇丸に対し、危機感を抱かせる事』。
すぐ暴走するサスケの呪印をナルトに教わった術で抑える。サスケを気絶させ、首筋を押さえたあの瞬間である。

一方香燐の役割は波風ナルと我愛羅の戦闘に、うちはサスケと春野サクラを介入させない事。サスケを気絶させるのは君麻呂が既にしたので、サクラが彼女の担当であったのだ。


(…でもまあこの女の力じゃあ、逆に波風ナルの足を引っ張る羽目になるだろーな)
己の無力さを痛感しているサクラをちらりと見遣る。香燐自身も感知能力が無ければ、君麻呂や多由也といった忍びに劣る為、サクラの気持ちがよく解った。あ〜…と眼を泳がせながら口を開く。

「…何か自分の特技や取り得を見つけろよ。そうじゃねえと、お前ずっと足手纏いのままだぜ」

香燐の助言にサクラはそろりと顔を上げた。「先生とか担当上忍とか、何か褒められた事ねえのかよ」と何の気も無しに告げられた一言に、瞳を瞬かせる。
サスケを追うように命じたカカシの言葉が頭に過った。

『お前にはやはり幻術の才能がある』


(……幻術が得意なのって紅先生だったわよね…?)
サクラの顔が変わる。何かを決意したかのような彼女に、香燐は内心ほっと安堵した。



しかしながら、このちょっとした忠告が春野サクラに大きな変化を齎す。
それが良い事か悪い事か、今の彼女達には知るすべが無かった。



















「…―――【口寄せの術】!!」

間違えて呼んでしまったガマ竜を安全な場所へ避難させる。今一度結んだ術でガマブン太の口寄せに成功したナルは、同じく完全体となった我愛羅と対峙していた。
巨大な狸の姿に、彼女の中に潜む存在が秘かに蠢く。



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