五十三 一尾VS九尾
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っとナルは怯えていた。目の前に立ち塞がる少年に対してではなく、在り得たかもしれぬ自分の可能性に。かつての自分を見ているようで居た堪れなかったのだ。
ふっと頭の中で過った人影がナルの心に語り掛けた。
『本当の強さというのは、大切な何かを守ろうとする、その一瞬だけ発揮されるものなのだから』
「…なんだ。答えはすぐ傍にあったんだってばよ…」
ナルに口寄せの術を教えてくれた、うずまきナルト。彼のなにげない一言が彼女の震えを止めた。
同時に、波の国で出会った白の言葉が後押しするように聞こえてきた。拳を握り締める。
「孤独な中で自分の為だけに闘い続けてきたお前は、確かにすっげーと思う。でも自分だけの為に闘ったって、本当に強くなんかなれねえんだ」
「…なんだと?」
聞き捨てならないとばかりに我愛羅の眼が鋭く光る。彼の殺気を直に浴びながらも、ナルは微笑んでみせた。
「本当の強さってのはさ。仲間を、友達を、自分にとって大切な人を守りたいと思った瞬間……そんな時に強くなれんだ―――――だからオレは、」
そこで言葉を切って、ナルは我愛羅を見据えた。なぜかたじろいだ彼へ真っ直ぐに言い放つ。
「お前に勝つ……ッ!!」
我愛羅(もう一人の自分)に負けられない。
「……う…」
「気がついたか」
ナルと我愛羅の戦闘を死角からひっそり覗き見ていた彼女は、サクラの呻き声に逸早く気づいた。呆れたように溜息を零す。
「こんな事言いたくねーけどよ。お前、何の為に此処まで来たんだよ?」
我愛羅の攻撃でナルとサスケから遠く離れた場所。そこで気絶していたサクラは、未だ覚束ない動きでのろのろと顔を上げた。聞き慣れぬ声の主に眉を顰める。
「……誰…?」
「ご挨拶だな。一応戦闘に巻き込まれないように安全な所まで運んでやったのによ」
ぼんやりとする頭で彼女の話を聞いていたサクラは、戦闘という単語にハッと我に返った。「サスケくんっ!ナルっ!」と今にも飛び出そうとする。
だが彼女の腕は、その声の主―――香燐にすぐさま掴まれた。
「…ッ、離してよ!!」
「お前が行ったってどうしようもねえだろ。ちっとは考えろよ」
「し、失礼ね!私だって…ッ」
「お前、何か特技でも持ってんのか?」
眼鏡の奥から覗き見える瞳がサクラを探るように見つめてくる。相手のもっともな言い分にサクラは俯いた。
同時に、先ほど別れたシカマルの発した一言が、彼女の脳裏に蘇る。
『大した取り得のないくノ一』
確かにそうだ。自分には何もない。写輪眼を所持しているサスケや、今現在多重影分身を駆使しているナル。
それに比べて自分は何なのだろう。
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