第二幕その十四
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である。
「ジークフリートは竜も小人も倒したのね」
「この声だ」
ジークフリートにはすぐにわかった。
「そうか、言ってくれるんだな」
「なら次は」
「次は」
「女の人ね」
小鳥はこう言うのだった。
「次は女の人ね」
「女の人!?」
ここでジークフリートはかつてミーメが自分に教えてくれたことを思い出した。
「そういえばあいつは」
「女の人は」
「僕は男でそれ以外にも女がいると言っていたな」
「高い岩の上に眠り」
小鳥の言葉は続く。
「激しい炎が周りを囲んでいる」
「炎が」
「火の神ローゲが彼女を護っている」
ここでこの名前を出す小鳥だった。
「ヴォータンにそこに置かれたローゲが護る中を越えて」
「炎の中を越えて」
「彼女を起こせば彼女は彼のもの」
「僕のものになるのか」
ジークフリートはその言葉の意味を理解した。
「そうか、わかった」
「彼女の名前は」
小鳥の言葉は続く。
「ブリュンヒルテ」
「可愛い歌。甘い囁き」
ジークフリートは小鳥の今の言葉に感謝していた。
「僕の心を駆り立てる。もっと聴きたい」
「私は悲しい時でも朗らかに愛の歌を歌う」
「それが小鳥なのか」
「哀しい時も歓喜を以って歌う。憧れを持つ者だけがわかる歌」
「それが僕なんだ」
憧れを持つ者が誰か、すぐにわかったのだった。
「森を出てその岩の上に。僕は彼女を目覚めさせられるのか」
「花嫁を得ることもブリュンヒルテを目覚めさせることも」
小鳥は歌い続ける。
「臆病者にはできない」
「臆病者には」
「恐れを知らない者だけができる」
「僕はそれを知らない」
あらためて自分のことを思った。
「それなら」
「後は行くだけだな」
「そこでまた学ぶことができる」
「そうだ、そこでなんだ」
小鳥の言葉の意味が今もわかった。
「恐れをそのブリュンヒルテから学ぶんだ。ではそこに行こう」
「さあ、そこに飛びに行こう」
明らかに彼を誘う言葉だった。
「ブリュンヒルテがいるその場に」
「よし、僕も行くぞ」
意を決した顔で言った彼だった。既に多くの財宝は袋に担ぎ指輪も兜も備えている。重い筈の宝も何でもない感じで持ってしまっている。
「そしてブリュンヒルテを」
こう小鳥の飛ぶ方に向かう。彼にとって運命の出会いが迫っていた。
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