間幕:Ir de tapas (軽食屋巡り)
Canard a l'Orange / 鴨のオレンジソース
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一日の終わりというものは、いつも平穏でありたいものだ。
願わくば、暖かい食事。
安らかな寝床。
宵のひと時を共に談笑で過ごす人がいれば、まさに無上の喜びであろう。
だが、仕事を終えたキシリアを待っていたのは愛憎渦巻く修羅場だった。
「ちょっと、キシリア! アタシと言う者がいながら、女を連れ込むってどういうこと!?」
おそらく二階の自室から外の様子を伺っていたのだろう。
玄関の扉を開けるなり先ほどの台詞と共に飛び出してきたのは、目のやり場に困るぐらいの豊満な美女――フェリクシア・マンティコラス・ジャシバーバ。
その正体は、魔獣の頭に"大"とつくほどに強大な魔獣"人喰い"である。
「しかも密着したわね! 女の……若い小娘の臭いがするわっ!! この私をさしおいて!! あぁあ憎い! この乳臭い臭いが憎いわぁっ!!」
人化を解いて、たちまちその姿を巨大な有翼の雌獅子に変えると、フェリクシアはキシリアの体を巨大な肉球のついた両腕で抱きかかえ、フンフンとその鼻面を胸や腹の辺りを嗅ぎまわった。
そして自分の縄張りを主張するかのように頭を擦りつけて自分の匂いで相手の匂いを上書きしようとする。
ちなみに乳臭い原因はカリーナのにおいではなく、彼女が食べていたアイスクリームが主であるが、嫉妬に狂った彼女はそこまで頭が回らない。
「なんだフェリクシア。 帰宅していたのか」
キシリアの相方を自称するフェリクシアだが、実はかなり多忙な生活を送っているため、家にいることがあまり無かったりする。
ちなみに、その職業はなんと弁護士!
その外見、性格、言動の全てが彼女をそれ以外の職にしか見えなくしているが、けっしてもぐりなどではない。
もっとも、キシリアが人であった頃の世界の弁護士とはかなりやることが違うため、この世界の住人ならば彼女が弁護士だといわれれば、それでアッサリと納得してしまうのではあるが……。
「こいつらはこれからしばらく一緒に暮らすことになるカリーナとクリストハルトだ。 あとその舌は引っ込めろ! 皮膚が擦り傷だらけになる!!」
妄執を伴って飛んできたピンクの凶器に、たまらず絶叫するキシリア。
鑢のような舌で顔をなめまわそうとするフェリクシアを、キシリアは両手を使い渾身の力で押しのけようとするものの……なにぶん外では非力な屋敷妖精である。
彼女の腕力ではまず逃げることは適わない。
ドラゴンの鱗ですら焼き菓子のように削り取るソレを、とっさに首を捻って避けたものの、ヤツがその程度で諦めるはずも無く……
はたしてキシリアはいつまで回避できるか?
マルは一回に賭けて、ポメは二回に賭け、テリアは当たる前に誰かが止めに入るに
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