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SAO−銀ノ月−
第四十九話
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ニヤケながら相変わらずの憎まれ口を叩いてくれた。

「さて、どうだか」

「……それはともかく! メンテナンス、終わったわよ」

 先程中断していた時には既に終わっていたらしく、俺に鋭い銀色の光を放つ日本刀《銀ノ月》を始めとした武器たちを返してくれる。

「やれるだけ最高のメンテナンスをしておいたわ。……あたしにはこれしか出来ないし。……死なないでね、約束して」

「いつもありがとう、リズ。それと、それは約束するほどのことじゃなく、当然だ」

 日本刀《銀ノ月》を腰に/足刀《半月》を足に/クナイを専用ポケットに……と言った具合で完璧に戦闘準備を完了させると、まずは一回深呼吸してリズの家から転移門へと向かおうと、《リズベット武具店》のドアを開いた。

 いつかのように、そこには開店待ちの男性プレイヤーなどはおらず、コトコトと回り続ける水車と俺の家が見えた。

「そう言えばリズ。鍛冶に大事なのは無心で叩くこと……っていう通説、リズは信じてなかったが、リズお手製のコツとかはあるのか?」

 本当に何の関係もない思いつきだけの質問に、リズは虚を突かれたようで、少しだけ考える動作を見せた。
あまり口には出来ない感覚的なものなのか、少々考えあぐねた後、ボソッと口に出した。

「……想い、かな」

 リアリストを気取っている節のあるリズにしては、無心で叩くという通説より、予想外のロマンチックな答えだった。

 ……だが不思議と、その言葉は俺の心の中に染み込んで行った。

「そうか……そうだよな……いや、いきなり変なこと聞いて悪かった。行ってくる」

「いってらっしゃい。約束守るのよ!」

 リズの送り出してくれる言葉に無言で応えると、ふと、我が家の方をチラリと見た。
その玄関先――俺のかつての仲間たち、ギルド《COLORS》の写真が飾ってあるところに、四人のプレイヤーがいた気がした。

 夢か現か幻か――それでも、ギルド《COLORS》ともう一度会えたことに感謝すると、もうどこにもいない彼らにも挨拶をして転移門へと向かった。

 第七十五層フロアボス攻略戦まで、残り30分に差し掛かろうとしていたところだった。

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