第九十五話 ホントに無事で良かったよ!
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ここは医療ルームで、試合で負傷した者を治療する役目を担っている。
そこのベッドの一つに、体中に包帯を巻かれたカイバが寝ている。
「……う……うう……」
「お兄ちゃん!」
カイバが目を覚まし、ヨッチが声を上げる。
「ヨッチ……母さん……良かった……」
傍にいる二人を確認してホッとする。
どうやら夢ではないようだ。
「良かったって、こっちのセリフだよ!」
「本当にアンタは無茶をして!」
二人に説教をされるが、今はそれが嬉しい。
もし何かが間違っていたら、二人に怒られることなど無かったはずなのだ。
「はは、悪い悪い。それより母さんか? トーゴに知らせてくれたのは?」
「う、うん。いつもアンタがトーゴさんのことを言ってたの思い出して」
カイバに闘悟の武勇伝をいつも聞かされていた。
ほとんど愚痴(ぐち)のような感じだったが、カイバがどれだけ闘悟のことを尊敬しているかが理解できた。
あんなふうに強くなりたいと、いつもいつも言っていたのを思い出して、リールは闘悟なら何とかしてくれるのではと、藁(わら)をも掴む思いで尋ねたのだ。
「トーゴさんて……あの黒髪の……わたしを助けてくれた人だよね?」
「そうだ」
「へぇ……あんな人とお友達なんだねお兄ちゃん」
「まあな」
本当に闘悟には感謝してもし切れない。
「すっごいんだよ! わたしを見張っていいた人達をあっという間に倒しちゃったんだから!」
「ま、トーゴだしな」
むしろ闘悟のことを知っている人からすれば、やられた相手を心配するだろう。
もちろんカイバはそんなことを思いはしないが。
愛しい妹を危険に晒(さら)した奴らなんて、心配するに値しない。
「ふうん……トーゴさんかぁ……」
ヨッチが何故か軽く頬を染めながら思い出し笑いをしているのを見てしまった。
「お、おいヨッチ! い、言っておくけどな、お前にこ、こ、恋とかまだ早いからな!」
体の痛みも忘れて必死に言い聞かす。
すると、彼女は頬を染めて口を開ける。
「や、やっだぁ! お兄ちゃんたら!」
「痛ってぇっ!」
そう言ってカイバの体を叩く。
もちろんその痛みでカイバは喘(あえ)ぐ。
「アンタ達、何やってんの……」
リールが肩を落としながら息を吐く。
「それは良かったのです」
闘悟から話を聞いたクィル達は、無事ヨッチを助けられたことに素直に喜びの声を上げていた。
この場にはミラニはいない。
何故なら闘悟から事情を聞き、騎士団を連れて誘拐犯人を捕らえるために廃屋へと向かった。
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